短編編集

□悪夢の中のぬくもり
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ピリリッピリリッピリリッ・・・


あれ・・・?

私、携帯なんか今持ってたっけ・・・?



何て言ったって今日は人生一度の結婚式!

そんな日に・・・

そう思いながらも、携帯を取り出す。


あっ・・・やっぱり持ってた・・・


でも表示されるのは見たこともない、ものすごくでたらめな数字の羅列・・・


「ねぇ、ちょっと見てくれない?」


そう言って、私の隣に座る旦那様になるべき人に話しかける。


「ん?なんだよ・・・?」

「電話がね・・・鳴ってるの・・・しかも見たこともない数字の羅列で・・・」

「あぁ?んなのほっときゃいいって!」


そうこうしてるうちに、携帯はピタリと鳴り止んだ。


「あっとまった・・・」

「ほらな!ほっときゃいいんだよ!」


一体何だったのだろう・・・


そう不思議に思っていたその時・・・

ピリリッピリリッピリリッ・・・


「えっ?!なんでまた・・・ねぇねぇ・・・」


私はもう一度旦那さんに呼び掛ける。


「あぁ?今度はなんだよ?!」

「また、変な電話が・・・」

「はぁっ?!またかよ!ほっとけって言ってんだろ?!」

「・・・!ご、ごめんなさい・・・」


携帯は話し終わると同時に鳴り止んだ。

しかし、またすぐに鳴り出す。

しかも鳴る度、鳴る度、数字の羅列が違っている。


「ね・・・ねぇ!おかしいよっ・・・ねえ!!」

私の旦那さんはもう話を聞いてもくれない。

その間にも私の携帯は、ものすごい速さで鳴ったり切れたリを繰り返している。

電源を切ろうと試みるも・・・


「えっなんで?!なんで切れないの?!!」


その時ふと窓を見た。

そこにはドレスを着た私と、私の上にふっとキラキラ光るものが見えた。



え・・・あれってもしか―――




ガシャァァン
<ぐしゃっ!>



あれ、私・・・

何だか沢山声が聞こえる・・・

そうだ・・・私・・・上に・・・シャンデリア・・・?


!!!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイ痛い痛いイタイ・・・・


カラダニガラスガツキササル・・・





ああぁあ゛あ゛あ゛あぁぁ!!!!!!






がばっ!

目が覚めると、私は布団の上だった。



はぁはぁはぁ・・・



今のは・・・夢・・・・なの・・・・?

すごく息が上がっていた。

気持ち悪い・・・


もう一度眠る気になんかなれなかった。

まどろみだす度夢の断片が近づいて来る。

その度に目を覚まさざるをえなかった。


そうだ!

あの人ならきっと何とかしてくれる!!


そう思い、私は部屋を出た。


   〇 〇 〇


なにも考えずに出てきてしまったけど・・・

よく考えたら今は真夜中。

起きている訳無いし、ましてや明日も任務に追われる人を起こすわけにもいかない・・・


「どうしよう・・・」


そう小さく呟いた時だった。


「そんなところにいつまで、いるつもりですか?早く入ってきてはどうです?」


そんな声が聞こえた。



えっどうして起きてるの?なんで私がいるってわかったの?

驚きつつも、そうっとドアを開ける。


「こんばんは・・・骸さん・・・」


不釣り合いだなとは思いながらも、私はこの部屋の主に真夜中の挨拶をする。


「骸さん・・・どうして私が部屋の外にいるってわかったんですか・・・?」

「君の事くらい気配でわかりますよ・・・」


呆気なくすごい返し方をされてしまった。


「それで?君こそ、こんな時間にどうして僕の部屋に?・・・というのは愚問でしょうね・・・」


そうすると骸さんは『ここに座って』とでも言うように、自分の座っているベットのすぐ隣をポンポンと叩いた。

私はそれに素直に従って、隣に腰を下ろす。


座って骸さんのほうを向こうとしたらいきなり、視界が闇色一色になった。

たっぷり十秒ほどほうけてから、やっと今自分が骸さんの腕の中にいることに気づく。


「あ・・・あのっ骸・・さん・・!?」

「夢・・・でしょう?大方は・・・」

「え・・・」

「怖い夢でも見たんですか・・・?泣いてしまうほどに・・・僕でいいのなら聞きますから、全部話してしまいなさい・・・」


そう言って、子供の背中をあやす様に私の背中を優しく叩いてくれたこの人に、私のリミッターを外されてしまった。

そこからはぐだぐだだった。

夜中故に、大声は出さないものの、しゃくりあげながら夢の内容を話す私を骸さんはずっと、背中を優しく叩きながら抱きしめていてくれた。


「それで・・・ヒクッとっても・・っ怖くて・・ヒクッ・・・」

「そうですか・・・それは怖い思いをしましたね・・・」


優しく頭を撫でてくれる骸さんの手に、再び眠気が襲って来る。


「次は眠っても大丈夫ですよ・・・僕がここにずっといますから・・・君の夢までも、僕が守ります・・・」


眠気を必死に散らそうとしていた私に骸さんはそういった。

その言葉が合図だったように、私は一気に夢の中へおちていった。

でもその時、さっき何回も眠ろうとした時にはあった恐怖は微塵もなくなっていた。


「・・・寝ましたか・・・僕はなにより他の誰でもなく、僕を一番に頼ってきてくれたのが、とても嬉しかったです・・・」


寝てしまった私が、骸さんが私にそんなことを言っているのは知るよしもない事で・・・

私は安心した眠りを保っていた。





Aribederuchi・・・



Fin


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