(仮)日常に割り込まれて

□第一話 御主人様
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高校生活一週間目

「学校ってつまんねーな…」
「そうですね、ごしゅじんさま」
僕は、休み時間に夢と希望で満ち溢れているはずの校舎のとある一角を歩いていた。
隣には面倒くさそうな顔をした玲を連れて。
「腹へったなー」
「そうですね、ごしゅじんさま」
「屋上で寝てぇー」
「素晴らしい考えですね、ごしゅじんさま」
「さぼるか?」
「お望みのままに、ゴシュジンサマ」

…。

はぁ、と一つ溜息を吐いた玲はどうしようもない子供を叱るように告げた。

「お前もっと楽しそうにしゃべれよっ!」
「っできるかっ!…ゴシュジンサマ」

すかさず突っ込みを入れる。
何この自己中心的態度。うん、最近何となく理解してきたけどさ。

僕がこんな話し方しているのもこの隣の奴の所為だ。
ただでさえ嫌なのにその上気を遣うことなんて出来るはずがない。

「むっつりした顔の下僕を連れててもつまんねーだけだろうが。俺を崇めろ、パシられろ」
「何で席が隣になって、同じ部活になっただけで僕がこんな目にっ…。ゴシュジンサマ」

「俺が部長だからだ。俺が全て、即ち世界は俺だ!」
(やばいこの人、相当病んでる…)

僕の名前は丹司 慧。
この高校に入学してから早七日。
念願の第一志望、勉強に勉強を重ね何とか筆記、面接共に通過し…。

その結果晴れて入学式を向かえることが出来た。
高校生活一日目から、少し人見知り気味な僕は不安で不安で、自分の席に縮こまっていた。
その時、

「俺と部活をやらないか?」

話しかけてきたのが彼、桜庭 玲だった。
こんなひかげものの僕に、こんなことを言ってくれる人がいて、無性に嬉しくて嬉しくて。何も考えず頷いてしまったら…。


「はっはっはーーーーーーー!!ワールド イズ マイン!」
…こんなことに。

見た目は格好いい?のに。ちょっとこれは…、ないよなぁ…。
天は二物を与えずって、このことかもしれない。

隣で騒いでいる玲に僕は一言。
「うるさいだまれごしゅじんさま」
嫌みっぽく言ってみたはずなのに、玲は爽快な笑顔でくるりと振り向き、力強く親指を立てた。
「いいぞ我が下僕っ!下僕根性が大分板についてきたな」
げぼくこんじょうってなんだよ!?

嫌みに至っては全く効果無し。
「くっ…くっそぉ…。――っもうやめやめ!玲の相手はうんざりだっ」
僕はそう叫んで踵を返し、この場を立ち去ろうとした。


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