長編

□unusual days!
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「わー、美味しそう…!!」


修学旅行三日目、遊園地で目一杯遊んだ後、夜はホテルに戻り部屋食を楽しむ。
旅館なだけに見栄えが良い繊細な懐石料理が並んでいる。
端から端まで見ても、どの小鉢も凝っていて食べるにはもったいない程だ。

「美味しそうだねー」

京子も隣で目をキラキラとさせている。
そりゃ一高校生がこんな料理を見れるなんてそうそうない。
修学旅行を満喫し、幸福感に浸る。

目の前の茶碗蒸し(だと思う)をひとくち分口に運べば、上品な味わいが口に広がる。


「ふぁー、幸せ…」

「これくらいで感激してるなんてまだまだガキだな」

「そうかな?美味しいものは美味しいんだよ」

「それがガキだっつってんだ」

「別にガキでいいもん……ん?」


あれ、今自分誰と話してるんだろう。
茶碗蒸しに夢中になっていて気が付かなかった。

なんか聞きなれた声な気がする。
声がする方へ顔を上げて、前を見れば何故か見慣れた帽子とか特徴的なもみあげが……


「…あれ…目ぇおかしくなったのかな」


目を勢い良くごしごしと擦る。
そして再び目をぱっちりと開けて前を見つめる。

あれ……やっぱりおかしい。

絶対に見えてはいけないものが見えてる気がする。


「ねぇ京子、私目が悪くなっちゃったみたいなんだけど…」

「大丈夫?」

「ううん、かなり重症みたい。なんか悪魔が見えるの」

「それは大変!リボーンくんに見てもらいなよ」

「そうだな。それは重症だな、診てやるぞ」


そういって目の前の真っ黒い人が近づいてきて、私の目元を覗き込んで確認してくれて…


「って違う!なんか違う!かなり違うよ!」

「そうか?悪魔が見えるなんて重症だぞ。」

「だって悪魔ここにいるもん!しゃべっちゃってるもん!」

「どこにしゃべってる悪魔がいるんだ?」

「私の目の前にいます!」

「……お前頭大丈夫か?」

「その可哀想な子を見るような目やめてぇええ!!」


必死な私を見て目の前の悪魔ことリボーンがいつものようにクククッと笑った。認めたくないけどこの馬鹿にしたような笑い方は紛れもなく本物のリボーンだ。

何故修学旅行先の京都にまで家庭教師が来ているのかはわからないが…

…これは、嫌な予感しかしない……


自分の本能の危険信号に従い勢いよく逃げるように部屋を飛び出す。


「おい、ナギ待て!」


リボーンの呼び止める声が聞こえるがそんなの聞いてられない。

思い返してみれば、リボーンが来てからろくなことはない。経験上、こういう時は逃げるのに限るのである。


そして隣の男子が泊まっている東館へと移動する。勢い良く階段を登り、とある部屋へと一目散に走る。
目的の部屋の前に着けば、何の躊躇いもなく思い切りドアを開けた。


「おいナギっ!男の部屋開けるときはノックぐらいしてから開けやがれ!」


開けた途端、威勢の良い獄寺くんの声が聞こえてきた。確かに部屋の中には着替え途中の男子もいたようで女子の私が突然入ったことにより戸惑っているようである。


「ナギ、どうしたの?」


奥からツナが出てきた。なんだか天使に見える。そしてツナに勢いよく抱きつく。


「ツナー!大変なの!悪魔が、悪魔がー!」

「ええ!?なに?悪魔って?」

「リボーン!リボーンが来たの!」

「何だってーーー!?」


ツナは私をなんとか抱きとめながらもリボーンがここに来ていることに動揺を隠せていないよう。まさかこんな遠く離れた土地まで来るなんて誰も予想できないだろう。

「「どうしよう…」」


お互いリボーンに植えつけられた恐怖が身に染み付いているのでここでこれから起こることを想定してガタガタと震える。
せっかく勉強からも離れて羽根を伸ばせると思ったのに。


「どうしたんだ?2人ともそんなに怯えた顔して」


2人で抱き合って震えているところに、恐怖の元凶の声が上から聞こえる。


「「ぎゃーーーー!!」」


声がする方へ同時に私とツナが顔を向ければ、案の定此方に銃を向けて恐ろしいほど満面の笑みを浮かべたリボーンが立っていた。
お互い叫ぶと同時に更にきつく抱き合う。

するとリボーンが眉間に皺を寄せた不機嫌な顔になってツナのこめかみに銃を当てた。


「ナギに抱きつくな。打つぞ」

「俺に八つ当たりすんなって!」


ぐりぐりと押し付けられていてもツナは意外にもあまり動じていなかった。もう慣れてるのかな。それはそれでどうかと思うけど。


「それよりリボーン!お前ナギにすることあるだろ!」


ツナがなにやら小声気味でリボーンにそんなようなことを言っている。それに対してリボーンがひとつ舌打ちをした。

もしかして修学旅行先まで来て、お説教でもされるのだろうか…

びくびくしていると、突然リボーンがやけに真剣な声でナギ、と呼んできた。


「な、なに…?」

「俺についてこい」


そういって背を向けて部屋を出てスタスタと歩いていってしまった。
ツナを見れば、行ってきなよ、とでも言いたげに頷いている。
確かにこのまま逃げているわけにもいかない。
見失わないよう急いでリボーンの後を追いかけた。






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