長編

□unusual days!
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はじまり




ズガンッ


「こんな問題もわかんねーのか!」

「ひぃぃっ!!」

「こんなんじゃ、立派な社長になれねーぞ」

「だからなる気ないって!」


真っ黒い悪魔のような(というより悪魔)家庭教師が問題を一問間違えるたびに銃で部屋中を撃ちまくる。
問題を間違えたからって、そのたび銃で撃つ家庭教師がどこにいるんだ!
世界中探してもいない!


「…はぁ…俺はお前のためにこんなに労力と時間を割いてるというのに…
俺のことを悪魔だなんていうのか。」


さっきとはうって変わって、今度は子犬のような瞳で悲しそうに見てきた。

確かに、悪魔は言いすぎちゃったな…
さすがに可哀想だったかも…


「ってなるか!!勝手に読心術使うな!魔界に帰れ!!ぐるぐるもみあげ悪魔大魔王!!」


ぐるぐるもみあげと言った瞬間、眉毛がぴくっと動いた。
気にしてたのかな…


「その言葉は聞き捨てならねぇな。
今度言ったらパンツ脱がせるぞ」

「ぎゃぁああ」


私は慌てて逃げると、ガキが、と馬鹿にするように鼻で笑われた。
結局勉強にならない…。


この家庭教師が来てから、いつも慌しく休まる時などほとんどない気がする……


本当、私の平穏な日常を返して欲しい。




















この悪魔な家庭教師が私の専属になったのはつい1週間ほど前。


真っ黒いスーツに黒いボルサリーノを被った長身に、誰もが認める美形の家庭教師と名乗る男が突然家に現れた。
リボーンさんというらしい。


こんな家庭教師がいるか!って冷静ならば突っ込めるだろうけど、
とにかくそんな突っ込みを入れられないほど本人を目の前にすると妙な迫力というか、すごみがあった。


男の話をとりあえず聞くと、なんと私は大企業の社長の娘らしいということがわかった。

そしてこの男は、うちの企業と深い縁のあるぼんごれふぁみりー?まふぃあ?だかなんだかの偉い方らしい。


それで私の父親直々に、次期後継者として鍛えてやって欲しいと言われたんだとか。


「いやいやいや、そんな大層な話、いきなり現れた知らない人に言われても信じることなんてできないですよ!
ボンゴレスパゲティだかなんだかしらないけど、子どもだからって舐めてると痛い目に遭いますからね!」


と強気で相手を睨むと、


「ほぅ…強気な女は嫌いじゃないぞ。」


そういって、目を細めて品定めするように私を見てきた。


「な、なによ!」


負けじと睨み返す。
もはや気持ち的には戦闘体勢だ。
なんでいきなり初めて会った人に色々言われなきゃなんないんだ!


「まぁ、百聞は一見に如かずというしな。
見せてやるぞ。」


そういってリボーンさんは私をひょいっと持ち上げた。


「ひゃぁっ!?降ろしてっ!降ろせーっ!」


ジタバタしても、リボーンさんは何事もないように涼しい顔をしている。まったく意味はないようだった。
力の差を見せ付けられたようで悔しい。

そのまま私は近くに止めてあった高級車に乗せられた。









運転席にはリボーンさん、私は助手席に乗せられた。


「どこに行くんですか!?」


まだ状況をつかめていない私は息を荒げて尋ねる。


「まぁ、着いてからのお楽しみだ。」


そういって、リボーンさんはにやりと笑った。
運転してる姿を少しかっこいいとか思ってしまったのは…内緒にしておこう。







ほどなくして、広大な土地に大きな無機質の建物が建っているのが見えた。

リボーンさんはなんの躊躇もなくその中に車を止める。


「ちょっと!こんなすごいところに車止めちゃっていいんですか!?
怒られちゃいますよ!」

「問題ねぇ」


あっさりとかわされた。せっかく注意してあげたのに。


「ちなみに、ここはお前の父親の会社だぞ。」


……


よく聞こえなかったから聞き間違えたんだよね。


「だから、こんなとこに勝手に車止めたら怒られちゃいますってー!」


「だから、ここはお前の父親の会社なんだぞ。」


………


「…ちょっとなにいってるのかわからない。」

「…はぁ…。ヘタレだな。よく見てみろ。
あの建物にあるマーク、見覚えがあるはずだぞ。」


言われた通り、建物を見上げてみる。


「あ!あのマーク…小さい頃お父さんの部屋でよく見た!」

「だろ?少しは信じられたか?」


少しは冷静になれてきた…と思う。
だがこの方18年、自分がこんな大企業の社長の娘だと知らずに過ごしてきたのだ。
事実をいきなり突き出されても…
頭で理解はしても気持ちがついていかない。


「…じゃあ今度は社長に会いにいくぞ。」

「お父さんに!?」


スタスタと長い脚でさっさと歩いて行ってしまうリボーンさんを、
不安な気持ちを振り払うように、思い切り走って追いかけた。






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