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□伝えたい、この気持ち
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神先輩と2人っきりでのボール磨き。



ドキドキするけど、仕事とこれは別っ!!!




赤くなるばかりの顔を隠し、真剣にボール磨きへ取りかかった。





「あ、このボール…」



手に取ったボールを見て、ふふふ、と笑みがこぼれた。



だってこのボール…



「どうしたの?日向ちゃん」



「このボール見て下さい」



神先輩は疑問を浮かべながらもじっとのぞき込んでくる。




「No.1ルーキーって書いてあります。これ、清田くんが書いたんですよね」




清田くんって面白いな。




「牧さんに怒られちゃいますね。黙っててあげよう…」



ね、神先輩。と振り向くと



神先輩は何となく不機嫌な顔をしていた。




「先輩…?」

「えっ、あ…そうだね!」



焦ったように、先輩は笑った。

珍しいなぁ…




「そ、れにしても…日向ちゃんは毎日ボール磨き、偉いね。大変でしょ?」




神先輩はさっきの焦った様子がなかったかのように、わたしを見た。




「えっと…大変じゃない、と言ったら嘘になっちゃいますけど、わたしはこの仕事好きなんですよ」




わたしは割とこの仕事が好き。




「毎日磨いても、毎日汚れてるんです。汚れてれば汚れてるほど、磨きがいがありますよっ!」




毎日汚れてるってことは、皆さんが一生懸命練習してる証拠ですね。



と少し付け足す。




「それに、わたしの磨いたボールを汚してくれるの、嬉しいんです」



自然と出た笑顔で神先輩の方を向く。



先輩は何故か固まってしまった。




「せ、先輩…?やっぱり疲れてるんじゃ…」


「ご、ごめん!大丈夫だよ」




無理させちゃったかな…?




わたしはバッと先輩からボールを奪い取った。




「えっ…!日向ちゃん!?」




「先輩、無理はダメですよ。後は、わたしに任せて下さい!!先輩はゆっくり休んで下さい」




先輩にそう言い、また作業を始めた。




「日向ちゃん…」



先輩は最初はためらっていたがありがとう、と笑ってわたしの頭をポンと触った。




「は、はい…」




先輩はドキドキさせるのが上手い。



わたしは早くなるばかりの胸の鼓動を抑えようと、胸のあたり握りしめた。









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