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□吸い込まれてく、その瞳
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「本、好きなんだね」
突然の言葉に少し戸惑った。
「え、と…は、い」
緊張して声がつまる。
「日向ちゃん緊張してる?」
クスクス、と笑う藤真先輩を見てわたしは目を見開いた。
「わ、たしの名前知ってるんですか…?」
すると今度は藤真先輩が目を見開いた。
「知ってるよ。陰野日向ちゃんでしょ?」
そう名前を言われた瞬間目から涙が出てきた。
「えっ!?ど、どうしたの!?」
「…ご、めんなさい…わたしのことをこんなに素敵な先輩が知っているなんて、嬉しくて…」
泣くわたしをそっと撫でてくれる先輩はどこまでも優しい。
「…知ってるよ。ちゃんと知ってる。1年生、図書委員、部活は入ってない、毎日放課後はここにいる。…ね?知ってるでしょ」
「えっ…?
、何でそんなことまで…わたし、地味だし目立たないのに…」
わたしがそう言うと藤真先輩はわたしの頬へと手をあてる。
「せ、んぱい?」
「地味なんかじゃない。俺の中で日向ちゃんは1番可愛い」
藤真先輩がわたしのメガネを外し前髪をそっと分けられる。
「あっ…だ、だめです…」
自分の顔なんて見られたくない…
とっさに下を向く。
しかしそんな想いも叶わず、藤真先輩の手がわたしの顔を上げる。
「やっぱり可愛い。」
赤くなるばかりのわたしにどんどん近づく藤真先輩。
反射的に目をギュッと瞑る。
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