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最近になって発展したこと。



日向ちゃんから日向と呼ぶようになったこと。


彼女が笑顔を見せてくれる回数が増えたこと。


ちょっとしたことをからかったりできるようになったこと。



俺が自惚れてないなら、かなり仲良くなれたと思う。





でも俺の気持ちなんか気付いてないよな〜…


他のことなんかどうでもいいくらい好きな気持ちが大きくなった。




「はぁ〜…」



部活中だけど溜め息が出る。
今日何回目だろうか。




「溜め息ついて、どうかしたんですか?」



まさに張本人が現れ、内心パニック状態になった。


心配そうにのぞき込んでくる目が可愛くてしょうがない。



「な、何でもねぇ…」


「そうですか?冬の試合のためにも無理は禁物ですからね」



はい、とタオルを俺に差し出し他の部員の元へと行った。







冬の試合か…




―――――…


夏、湘北に敗れ、俺達、翔陽はインターハイに出場することができなかった。





部員達は悔しさで涙を流していた。


俺もコートで1回だけ泣いた。

その後は泣かなかった。


笑って部員達を励まして、しっかりしろよ、と渇をいれたりした。




俺は本当は泣きたかったと思う。悔しくてたまんなくて、カッコ悪いくらい泣きたかった。



でも俺は選手兼監督だ。
みんなを支えないと、とか思って我慢した。



俺は誰もいない部室で声を殺して泣いていた。




そんな時、現れたのが日向だ。



俺は顔が上げられず、ずっと俯いていた。


日向は何も言わずに、俺の隣に座った。




黙って俺の横にいる。





「…何も、言わないの?」



少し震える声で彼女に聞いた。




「何か、言った方がいいですか?」




優しい声色で微笑んでいた。




「…っ」



自然と涙が出た。


何か言ってほしくなかった。

励ましの言葉とかいらなかった。


こうやって傍にいてほしかったのかもしれない。



「先輩、お疲れ様です」と肩を貸してくれた。




「…ぅ、っ…」



俺には小さすぎる肩にもたれ、泣いた。




「勝ち、たかった…」

「はい」

「すげ、悔しい…」

「はい」




自然と口からこぼれる。



日向はただ頷いていた。


俺の頭を小さい手でそっと撫でてくれる。



何か、落ち着く。




俺は日向のおかげで乗り切れたんじゃないかと思う。






日向は強い。


自分の意志がちゃんとある。


人に弱みを見せない。


周りをよく見てる。



日向は…
俺達に弱いところを見せたことがない。


怒ったり
泣いたり

そんな顔は見たことない。



苦手なものとか、怖いものとかしらない。


だから、たまにはそういうところも見せてほしい。



頼ってほしい。












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