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□君に夢中
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出会いは簡単だった。



恋に落ちたのも簡単だった。






君に夢中












1番大変な時期がやってきた。


それは新学期。




去年も一昨年も、これほどかってくらい数のマネージャー希望が殺到する。




俺目当てのやつばっかだ。

自惚れとか自慢とかじゃない。

本当のことだし。




一昨年は7人くらいいたが全員1週間経ったくらいでやめやがった。


去年は10人くらい。
まぁ全員やめたけど。





そして今年は15人。

記録更新だな。




さすがに全員をマネージャーにするわけにはいかないから今、面接をしている。



1人1人に

「どうしてマネージャーやろうと思ったの?」

とにっこり笑って聞く。



「バスケが好きだからですぅ」
「役に立ちたいからでぇす」


頬を赤くし
語尾をのばして
かわいこぶって

チラチラ俺の顔を伺う。




バスケが好き?
役に立ちたい?

そんな目で信じる訳ないだろ。



俺達の想いをバカにするな。




そんな怒りが込み上げるが顔は変えない。



14人に聞き終え、ラスト1人となった。



別に期待はしていなかった。


どーせ同じだろう。




「どうしてマネージャーやろうと思ったの?」



さっきと同じく、
にっこり笑って聞いた。




「バスケが好きだからです」





表情1つ変えずに、凛とした口調で言った。


そんな回答いくつもあった。


だけど彼女は何か違った。



真っ直ぐな真剣な瞳が俺の目をじっと見つめていた。




俺はそんな彼女からしばらく目が離せず、固まってしまう。




「…バスケが好きだから、それだけじゃダメですか?」




ああ、わかった。

この子は本気なんだ。

本気でここに来たんだ。




「う、ううん。ごめんね。じゃあ面接は終了。明日また来てね」




また笑い、俺が言うと
黄色い声が「は〜い」と飛び交う。



少しイラっとした、が
そんな中に混じっていない彼女を見て、何故かイライラがなくなった。























「いいマネージャー希望はいたか?藤真」




練習が終わり、花形が俺に話し掛ける。



「だいたいは俺目当てって感じだった。けど…」



「けど?」




「1人だけ、今までとは違うやつがいた」




彼女を思い出したら、口元が自然と緩んだ。




「それは期待だな」



「まぁな」







彼女の顔が頭から離れない。


強い意志を持った顔。



俺は、この時から
君に夢中だったのかもしれない










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