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□伝えたい、この気持ち
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朝の光が眩しく、海南大附属高校の体育館に照りつけた。



まだ早いせいか、グラウンドで朝練をするかすかな声だけが聞こえる。




わたしは海南のバスケ部マネージャー。



強豪の海南には珍しく、今日は朝練がない。





今、何故わたしがここにいるのかといいますとボール磨き、床磨きをしているからだ。




毎朝早く起きて、部員のみんなが来る前に済ませる。



これがわたしの日課。




今日は朝練もないし、少しだけ遅めに家を出て、今にいたるわけです。




「後は、ボールだけ…」




やっぱりこれだけの量を1人でやるのは大変だなぁ…




初めはたくさんいたマネージャーも、今となってはわたし1人。




大変、練習が多い…などという理由で止めていった。




わたしは、結構楽しいと思うんだけどな…





純粋にバスケが好きで皆のプレーが好きでこの仕事が好きで役に立ちたくて

マネージャーという名だけど
それなりに誇りを持っていた。



だから毎朝早く来てボールを磨いて、床を磨いて…

気づかなくてもいい。

ただ何かしたかった。

そんな理由だった。




しかし、
わたしにも不純な理由が出来てしまいました。









「おはよ、日向ちゃん」





「えっ…じ、神先輩っ!?」




理由の張本人登場!!

彼は神宗一郎。

わたしの…好きな人。



「おっ、おはようございます…」




わたしが言えば、にこりと爽やかな笑顔でこちらを見て、優しく頭を撫でてくれた。




「いつも早いね。」





先輩の大きな手が、わたしの髪を綺麗にかき混ぜる。


ドキドキしてしまう。


わたしの大好きな手。




「せ、先輩は…朝練ないのにどうしたんですか?」





「早朝トレーニングってとこかな」





わたしの頭から手をどけ、首にかかっていたタオルで顔を拭う。




ちょっと残念、なんて。





「日向ちゃんは日課のボール磨き?」



「えっ…?し、知ってたんですか…?」



ウソ…誰にも気づかれてないはずなのに…




「もちろん。こんなに綺麗なんだから気づかないほうがおかしいよ」





…嬉しいな。

自分のしてた小さなことを誰かが知っててくれたんだ。





「…皆さんが少しでも気持ち良くできればと思いまして…」






他の気持ちもあったりする。



神先輩が気づいてくれるかもしれない。

なんて考えたり。



わたし、不純だ…



神先輩はわたしを見て、黙っている。




「あ、あのっ…迷惑ならすみません!!」




あわわっ…
ど、どうしよう…

何かおかしかったかな…



「あははっ、迷惑なんて思うわけないよ。ただ、毎日大変なのに偉いなって」




そう言い神先輩はまた、わたしの頭を撫でてくれる。



「た、大変だなんてそんな…楽しいですし、皆さんの方がよっぽど大変ですよ…」



わたしがそう言うと、
神先輩は優しく微笑んだ。


あ、胸がキュンとなった






「俺も手伝うよ」

「えっ…!!で、も…」




神先輩はわたしの手から素早くボールを取った。



「あっ…せ、んぱい!!」



先輩に取られたボールを、また取ろうとしたら



「だめ、手伝わせて」

とおでこを抑えられたら。



先輩の小悪魔のような笑顔にボールを取ることができませんでした。





「…疲れてるのにすみません」



「日向ちゃんとなら疲れなんて飛んじゃうよ」





さらりと爆弾発言。



顔から火が出るくらい真っ赤になったのがわかる。





「あ、真っ赤だ」




(ふふ、可愛い)


なんて頬を触れて言うから…


余計赤くなってしまった。





あー…


早く済ませちゃおう。











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