殺人嫌いの物語

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0 危険な転校生


○月×日。
転校生がやってきました。
しかも、二人。

「汀目俊希だ。仲良くする気はないね」

哀川美奈です。よろしく、しないでください」

さすがにしょっぱなからのよろしくしないで宣言には驚きましたとも。ええ。
そう思っていると、沢田たちが文句を言い出した。

「何言ってんだてめぇ!お前の名前は沢田美奈だろうが!」

「そうだぜ。悪い冗談やめろよ」

「どういうつもり、美奈」

「美奈ちゃぁ〜んvv・・・?」

「美奈ちゃん、一体なんなの?!」

その後、彼ら含む並中生の暴言の数々。
いや、正直彼らへの見方が百八十度見事に変わりましたよ。そりゃあ変わるだろ。あれは。
きっと私と同中の人々もそれに納得してくれるはずだ。
もう、あきれを通り越しそうだ。
苛々したので、一発隣の獄寺の席を蹴らせてもらった。

ガガン!

あ、強く蹴り過ぎた。
机が隣の沢田の席にぶつかった。
突然の事であたりが呆然とする。
しかし、理解したらしい獄寺が殴りかかってきた。

「てめぇ、鏡!どういうつもりだ!」

「は?」

私は軽く、彼を鼻で笑う。
正直、「どういうつもりはそっち」でしょ。
一体、なんなのさ。
突然「ただの転校生に暴言吐いて、嘲笑して。人としてその感性を疑う」ね。本当、ばっかみたいだ。

「周りをちゃんと見たほうがいいんじゃない?いくら問題児だとしても、それはやりすぎだよ?」

「んだと、テメェ!!」

獄寺が、拳を振り上げた。
本気でいらっときた。
女子に手を上げるなんて、サイテーだ!
私の平手うちが、パシン!と教室に響く。
キョトンと獄寺が私を見る。拳は既に下に降りた。
私は、獄寺に向かって言い捨てた。

「女子に手を上げるなんて、サイッッテー」

すると、私と同中の女子をはじめ、並中以外の女子生徒が口々に獄寺を攻める。
並中の女子も、さすがに今のはやりすぎだと思ったのだろう。攻め始めた。
男子達も、場の空気に乗る。完全に獄寺たちは教室で孤立していた。
ちらりと転校生二人を見る。
二人は、キョトンとしてこちらを見ていた。なんとなく、グッチョブ!と右手で作って軽く掲げてみせる。
哀川さんが、不思議そうに首を傾げながら返してくれた。いい子だ。
慌てて沢田たちが弁解する。
私は、さっさと一人で席に着いた。



said 綱吉

美奈が帰ってきた。
その日俺は、朝から嫌な予感がしていた。
超直感がずっと警報を鳴らしていた。
学校について、転校生が二人いるといわれて、入ってきたとき、その意味が分かった。

「汀目俊希だ。仲良くする気ないね」

哀川美奈です。よろしく、しないでください」

哀川?誰だよそれ、お前の名前は・・・・・・お前の名前は!

「何言ってんだてめぇ!お前の名前は沢田美奈だろうが!」

獄寺君が、すかさずそういう。
山本も、続けていった。

「そうだぜ。悪い冗談やめろよ」

俺は、美奈のほうを見て言った。

「どういうつもり、美奈」

「美奈ちゃぁ〜んvv・・・?」

「美奈ちゃん、一体なんなの?!」

麗美ちゃんも、京子ちゃんも、美奈を攻める。
そして、元並中生たちも次々の文句を言い出す。
暫くそれが続いたとき、

ガガン!!

突然、俺の机に隣の席の獄寺君の机がぶつかった。
俺達が、驚くと、蹴った張本人である鏡さんは平然と俺達を見ている。
獄寺君が、掴みかかった。

「てめぇ、鏡!どういうつもりだ!」

「は?」

俺が止めようとしたとき、鏡さんが不機嫌そうな声を出した。
駄目だ、今、動いてはいけない。
超直感がそう告げていて、俺は動けなかった。

「どういうつもりはそっち」

はっきりと、鏡さんは言った。
そして、獄寺君を見据えたまま続ける。

ただの転校生に暴言吐いて、嘲笑して。人としてその感性を疑う」

ただの転校生。そうだ、鏡さんは、何も知らないから、鏡さんから見たら美奈はただの転校生なんだ。
それなのに、そんなただの転校生に、人違いかもしれないのに、そんなことをいうなんて。
俺達への、鏡さんからのイメージが確実に悪くなった。

「周りをちゃんと見たほうがいいんじゃない?いくら問題児だとしても、それはやりすぎだよ?」

「んだと、テメェ!!」

獄寺君が右手を振り上げる。
それは駄目だ。
これ、これ以上、彼女からのイメージを悪くしちゃ!!!
そう思ったとき、

パシン!!

響くいい音。
獄寺君が、呆然と赤くなり始めた頬を押さえる。

「女子に手を上げるなんて、サイッッテー」

そういって、彼女は自分の席に座ってしまった。

said 綱吉 end
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