小説
□この声は届かない
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『ごめんね、そしてありがとう。
私のパートナーになってくれて。本当にありがとう』
そう言って、
ボクの目の前でキミは消えてしまった。
キミが消えてしまったその場所を
ボクはしばらく離れることが出来なかった。
目をつぶれば、キミの声が聞こえてきそうで。
目の前で、キミが笑っているんじゃないかと期待してしまう。
けれど、その期待はすぐに崩されてしまった。
目を開いても、キミはいなかった。
そして、思い知らされる。
キミがはもうこの世界にいないということを。
もう、キミのまぶしい笑顔を見ることが出来ない。
もう、キミとおどけた話をすることは出来ない。
そう思うだけで、悲しみを超えた感情が、
涙となって流れていく。
ボクは、何度もキミの名前を叫んだ。
たとえ、ボクの声が枯れたとしてもいい。
キミが返事をしてくれるなら。
何度も何度も叫んだ。
けれど、ボクの声は悲しいぐらいに空に消えていった。
もう・・・。
ボクの声はキミに届かない。
そう思うと、また涙が流れてくる。
そして、改めて自分が泣き虫なんだと理解した。
そして、また思う。
どうして、モミジは笑っていたのかと。
自分が消えてしまう、その瞬間も。ずっと。