小説

□幸せになって欲しいから
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わたしが生まれた世界は暗かった。
しかも、色違いだったわたしは仲間に見捨てられ、
人間達からは金になると追い掛け回された。

精神的にも、体力的にもボロボロになったわたしは、
もう生きる希望も失っていた。

そんなわたしに、あなたは手を差し伸べてくれた。


嬉しかった。


その手は温かくて、優しくて。
わたしはその温かさにすがりついた。
あなたは、何も言わず、ただ、見守ってくれた。

同じ草タイプ。ポケモンは診んな、暗い世界に心を汚されていた世界。
その中で、同じように必死に生きてきた。
そんな共通点に、無駄にわたしは“運命”を感じてしまった。

いつかは届いて、答えてくれると思っていた淡い想い。

わかってた。
心のどこかでは、届かないってことぐらい。

だって、あなたの目はいつもあの子を映していたから。

わたしが思いを伝えたところで、きっとあなたを困らせてしまう。

だから、この想いはわたしの心の中にしまっておくことにした。
想いが伝えられなくても、わたしはあなたが幸せならそれでいい。
そう思ったから。

でも今。
いつもあなたは悲しそうな顔をする。
きっと、あの子が側にいないから。

悔しいけど、あの子の代わりなんてわたしには出来ない。

それに、
あなたの悲しそうな顔は見たくない。

あなたには、幸せであって欲しいもの。

だから・・・。

『あなたを
過去へ、あの子のいる世界へと送ります』

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