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□ 知らぬ嫉妬に恋心─…。
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休み時間───…。



先程の嫌な光景を忘れたくて意味もなく
階段を降りて外に向かおうとしていた─


だが、ふと足を止めてしまう…。



下の方から上がって来るのは、先程目が離せなかった同室の───…

「………………トキヤ…」


無意識に声が漏れていた。
ハッと思い留まったがもう後の祭り。
名を呼ばれた相手も此方に気付き静かに声を掛けてくる


「──何処かへ行かれるのですか?」
「……あ………うん…」

目的などは特にない。
だが、まさか声を掛けられるとは思って居なくて油断しており…咄嗟に出た言葉はかなり短かった……。


「そうですか…くれぐれも怪我のないよう気を付けてください。」

相手なりの労いの言葉を掛けられたが耳に入って来ず、顔を俯かせてしまう…。

いつもなら、鬱陶しいと感じる程に元気な相手が妙に静かなのが気に障り

「音也?」

いつもは見上げられてばかり居るのだが
階段の段差を利用し、下から相手の顔を覗くと小難しい顔をしていたのが目が合うと目を丸く見開いて反射的にピクリと小さく肩を揺らした。

その反応が再び気に障ったが──敢えて態度には出さず

「何を考えているのが知りませんが、気を抜いていると怪我をしますよ」

と諭すように告げると

「………………ごめん」

小さく謝罪が返ってきて同時に目までも逸らされてしまう。

何かをした覚えのないトキヤは無意識に眉間に皺を寄せた──…。


しかし、気に掛けすぎると機嫌を損ねることがよくあるので、気にしていないフリをし

「そう言えば伝え忘れていましたが…今日の夜に少し出掛ける予定がありますので、遅くなった場合は先に休んでいてください」

音也はトキヤの帰りが遅い時でも起きていることが多く、それに少なからず気を遣わせているのだと思っていた為に吐いた言葉だったのだが──…

「………分かった…。」


言葉は短いが隠しきれていない声色に不機嫌なのが伝わってくる──…。

が、それを吐き捨てるように言って早足で駆けて行ってしまい……


「…………………?」


音也の態度が理解出来ず
その場に残されたトキヤの眉間には
先程より深く皺が刻まれていた───…。
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