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□ 霜に募る愛の花
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もう、どれくらい走ったか分からないくらいに息は切れて…呼吸も乱れていた。

那月の身体は大きい方だし、身長も高い。

いつもなら簡単に見付けられそうなはずなのに
何故か今日は中々見付けられないで居た。


「…………たくっ……どこに居るんだよ……あの、バカっ!…………ッ?!」

最近、ゆっくりと身体を休めれてなかったせいか…それとも今、探し回って走り続けてたせいか……いや、両方のせいだろう。

足や身体の疲労を強く感じ疲れきってる身体はジッと立てなくなるくらい足元が覚束ず、思わずながら近くの壁に軽く倒れ込んでしまう。

「………もう…無理!」

とその場に腰を下ろして
少しだけ息が整うのを待つ。


腰を下ろした位置から見える窓の外の世界…

空は青く澄み渡っていて
遠くの方で鳥が何羽か飛んでいた………。


「……………鳥…。あ、もしかして…」


瞬く間に立ち上がり
思い当たった場所にまた駆けて行くのだった。







翔がやって来た場所は
那月のお気に入りの場所。

そっと辺りを伺いながら静かに足を進めると
そこには鳥と会話をしている那月が居た………。


やい、こら。と声を掛けようとしたが
下手に声を掛けれるような空気では無いと感じ取り
言葉を飲んだ。


「…………………」


違和感の感じる空気に遠目からそっと様子を伺うしか出来ず…
次第に時間は流れて行ったのだった─────。






先に部屋に着いたのは翔の方。
翔が部屋で椅子に腰掛け寛いでいると那月が帰って来た。


部屋に帰って来た那月と目が合ったが、すぐに逸らされてしまう。

何かがおかしいと思った翔だが、それを確かめようにも、どう言葉を切り出せばいいのかが分からず沈黙が続く……


が………


先に口を開いたのは那月の方だった…

「あ、僕先にお風呂に入ってきますねぇ」

いつもと変わらない声色…にも思えたが
小さな変化にも長年一緒に居る翔には分かってしまう。

「待て、那月!俺に何か言いたいことが、あるんじゃねーのか?」


咄嗟に腕を掴み
相手を真っ直ぐ見ながら言ったのだが…

目が合った那月の顔は
一瞬驚いた顔付きをしていたが、徐々に悲しげな顔にへと変わる……



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