km*bk
□ 冬の蜃気楼。
1ページ/3ページ
雪がパラパラと降り出して──…
吐く息までも白く─
白く──。
街に響くのは賑やかなクリスマスソングに人の声───車が道を走る音に、積もった雪をザクリと踏む音。
「………私と仕事どっちが大切なの?って言う言葉あるじゃん」
「あるね。それがどうしたの?」
ホールケーキを買って来てと頼まれて、買いに来た帰り…祐希が突然呟いた言葉に悠太は足を止めて振り返る。
「…一度言ってみたくない?」
「……………」
何故、こんな質問にわざわざ足を止めてしまったんだろ?と自問しながら、せっせと向きを直して再び足を進める。
「あ、悠太待ってよ」
「……何かと思って足を止めたオレがバカだったよ。まさか、そんなくだらない質問だったなんて…」
「くだらなくないよ」
「くだらないよ…」
私と仕事どっちが大切なの?なんて──
わざわざ聞く必要もないだろ。
そんな事を言うのは子供くらいだ。
馬鹿馬鹿しい……。
「それに、一度言ってみたいんなら、いつでも言えばいいんじゃないの?オレは反応しないけど」
「………意地悪」
「………」
祐希がボソリと呟いた言葉が頭の中で反響する。
意地悪………ではないだろうと。
なんて、悠太は思っていても口にはしないが。
「反応がほしいなら要にでも言ってみれば?絶対に返ってくるよ」
(ついでに頭も叩かれるけどね)
要はすぐに手が出るから…
まぁ、それは叩かれる側に問題があるからの話で…
「えー、要?……要に言っても意味ないもん」
「………………」