ut☆pr
□ 孤独を知る時間…。
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同室の住人は
部屋に居る時間に決まりはなく──…
むしろ、居ない時の方が多い………。
寂しい────…
最初の頃は、よく感じていたが
それが何回も繰り返されていくと
人間は慣れてしまう─…。
「……トキヤまだ帰って来ないんだ…?」
一人で居る部屋は
やることがなくなってしまい、そして虚しい…
ギターを手に取り、暫くの間は弾いていたのだが─…
いつまで弾いてても…
決して部屋のドアが開くこともない。
弾くのを止めれば
嫌にしーんとした空気に包まれ居心地が悪い…
他の友人の部屋に行って
話し相手くらいになってもらうのもアリなのだろうが…
今はそんな気分でもないー…
今、逢いたいと願うのは
ただ一人───…。
だが、帰って来ないのであれば
その感情は意味を成さないものになる。
再びヘッドフォンを手にし
耳にへと当てて曲を流す……
もう、かれこれ何度目の
同じ行動だろうかー?
ふと、目が覚めた──…
耳には付けたままのヘッドフォンから曲が聴こえている。
いつの間にかソファで寝てしまっていたみたいだ…。
身体を起こそうとした時、重みを感じた──…
「…あ……」
自分の膝の上に人の頭──…。
規則正しく聞こえてくる寝息に
落ち着きを取り戻せる、香り────…。
(………帰って来てたんだ…)
そっと起こさないように
出来るだけ近くに顔を近付け
「────お帰り…」
そう小さく囁いた…。
するとタイミングよく寝返りをうって
顔が向かい合う形になった……。
「…………………っ」
起こすかも知れないと思いながら、そっと
唇を重ね──────。
今はこれだけでも幸せ──
唇を重ねる度に少しでも近くに行けた気がする─……。
外からは雨が窓に跳ねる音が小さく響いていた───…。
今の、この静かな時間が
居心地良い───…
君の温もりを傍に感じた時─…
人は愛だと知り安らかに眠れるのだから──…。
・fin・