ut☆pr
□ 届かない距離
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俺が求める温もりは
近くにあって限りなく遠い────。
朝方から音也の奴とサッカーをするだの言って
部屋を出ていったきり、昼時になってもまだ帰って来ないアイツを那月は静かに待っている……。
(何故、待つ必要があるのか?)
そんな事を思っていても
“表”に出ていない俺には、関係のないこと。
だが………那月との約束を守らないアイツに
確実に……そして静かに
微かな怒りは募っていく……。
(遅すぎるだろが………ッ)
俺の怒りも抑えが利かない程に苛々し始めた丁度その時
「悪ぃ!遅くなっちまってごめんな!那月!」
遠くの方から息を切らしたアイツの声が聴こえる─
「あ、お帰りなさい、翔ちゃん。全然大丈夫ですよぉ?それより…翔ちゃんも大丈夫?」
おまけにアイツを気遣う那月の声も───…
(……フンッ、そんな奴ほっとけばいいのによ…)
どこまでも俺の“身体の主”はお人好しだ……。
アイツを待つ時間に、那月が何を考えているのかは
一心同体の俺には、犇々と伝わってくる─。
その感情が時折
俺の胸を締め付ける──。
嫉妬なんて言う可愛いものじゃない
憎くて──辛くて─壊したくて──苦しくて──
俺は何故生まれたのだろうか────。
壊れゆく心は
どこで癒せばいいのか─。
何故、アイツの横に居るのがお前で俺じゃないのか──……
守るべきものは何か─…
時々、分からなくなる─
俺は那月を守り
那月を影から支える存在として生まれた──
だが今は
アイツの横で笑って
触れることの出来る
お前が憎くて堪らないんだ、那月─────。
狂おしさに嘆くことすら出来やしないだなんて──…
俺を壊していく
アイツを俺の手で壊したい──
なんて………
ただの戯れ言だ…。
この想いは闇底に─…
大切なモノを一度に二つも失うだなんて馬鹿げた話……。
そっと俺の内に眠れ─ 狂いそうになる前に───。
・fin・