ut☆pr
□ 夢から覚めても…
1ページ/2ページ
外は雨が降っている─
「雨…中々止まないね…」
同室の音也がポツリと漏らした言葉だった。
「今日は一日中、雨らしいですからね…仕方ありませんよ」
特に気に止めるまでもなく、読んでいる最中の本から目を離さずに、いつもと同じ声色で言うと
何やら視線が………
ふと相手の方を盗み見、見てみると
軽く頬を膨らませて、目を離すことなく、こちらを見ている。
まるで残念ながら雨で
大好きな散歩に行けなかった飼い犬のように…。
「……何か言いたい事でも?」
相手の言いたい事なんて百も承知。
だが、いちを聞いてやる。
すると…
「うー…トキヤの意地悪!俺がどんだけ楽しみにしてたか知ってるくせにさ!」
「えぇ……知ってますよ。毎日、毎日しつこいくらいに言って来たのは、貴方ですから。」
「……………うっ?!だって、マジですげぇー楽しみにしてたんだもん…」
シュンと耳を垂らして項垂れる犬のように落ち込む音也の姿を見て
小さく溜め息を吐き
「明日………晴れるといいですね…」
相手の気持ちを汲んで、いちを気の利いた言葉を掛けると
パッと表情が変わる……。
素直な音也は感情を隠さず顔や態度に出やすい為
単純で扱いやすいのだが……少々羨ましい部分でもあった。
「うん!」
子供のように純真無垢な笑顔を向けて笑い掛けられ
つられて笑いそうになるが、スッと顔を逸らし
「では、早く寝ないと起きれませんよ?」
「わ、そうだよね!うん。もう寝るよ!お休みトキヤ」
「はいはい……お休みなさい。」
そして部屋の電気を消して眠りに就いた…。
までは良かったのだが─
翌朝。
.