≪始まりは奇病≫

□研究所
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蛇のようにくねくねと、
山腹を這う峠道。

耳にかかる変な圧と、
左右にキツく振られる
気持ち悪さに耐えながら、
杏子はずっと
モニターにかじりついていた。

「エンジンが焦げ臭いんだ」

勇次が、後ろに声を投げる。

「頂上で少し休ませてもいいかな」

「あ……」

返事の前に杏子は、
思わず声を漏らした。

「どうした」

ややためらう杏子。

「……亡くなったわ、999号の患者さん」

いろいろ驚いた。

「そんなことも分かるのか」
「まあね」

しまった。
また、女王に
磨きがかかってしまう。

「何か焦げ臭いわね」

顔を上げた杏子が
鼻を鳴らした。

ややうんざりしながら
勇次は同意する。

「ああ、そうだな」
「峠で休ませましょうよ」
「……そうするよ」




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