□海に行こう―当日―
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セイバーが、やってくる。
金色の髪を揺らし少し困ったように目を伏せて。
青い水着とセイバーの白い肌がキラキラと調和していてディルムッドは目が離せなかった。

「ランサー!どうかしら!」

後ろに隠れぎみだったセイバーをランサーの前に差し出すアイリ。
ディルムッドはその魅惑的な瞳をただ一人彼女に向けて微笑んだ。

「セイバー…すごく似合っている」

「そ、そうか…?このようなものを着るのは初めてでよくわからないのだ」

「お前にぴったりの色だ」

炎天下の中、更にあっついオーラを放つ二人。
周りで見ている者はご馳走状態である。

「可愛いでしょ?選んだかいがあったわ」

ニコニコと上機嫌にアイリはさらにセイバーを押す。

「ア、アイリスフィール?」

「セイバー、遊んできなさい!じゃあ後でね!」

そう言ってランサーの方へと押しやった。
セイバーは疑問符を浮かべていたが、ランサーは頬が赤い。

「……遊ぶか?」

「そ、…そうだな…」

この歳で二人で遊ぶというのは、なんだか気恥ずかしい。
海、水着、という状況も加算され尚恥ずかしかった。

「………何をする?」

「とりあえず、泳ぐか」

せっかく海に来たしな。
ランサーはそう言って準備体操を始めた。
しかしセイバーはどこか遠くを見ている。

「…海か…」

くすっ、と自嘲の笑いと共に吐き出された言葉にランサーは戸惑った。

「?…どうした、セイバー」

「いや、大した事ではない」

首をふるセイバーだがやはり元気がない。
ランサーは困り果ててセイバーの手を掴んだ。

「…嫌なのか?」

「え?」

「泳ぐのが嫌か?」

きょとんと瞬くセイバー。

「ああ…。違うのだ。そうではない。泳ぐのは好きだ。ただ…」

「ただ?」

言葉を切ったセイバーが次は恥じるように目を伏せた。

「…笑わないか?」

突然の問いかけにランサーは驚いた。
後、少し傷ついた。自分は笑うような人間と思われているのか。

「笑わない。俺をそんな人間だと思うのか」

「そうだな。疑ってすまない。かなり昔の事を引きずる自分が情けないのだ」

セイバーはランサーの怒りを感じとったのか静かに謝罪した。
そしてもう一度海をみた。
ランサーはセイバーが海を見つめる目に戸惑いを見つけた。
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