□海に行こう―準備―
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それはクーのこんな一言から始まった。

「間違ってるぞ」

「え?何がです?」

ディルムッドは手元の宿題に目を落とした。
そんな彼の背中をクーは叩く。

「え?え?」

「お前…間違ってる!!今はなんだ!!」

クーが何故怒っているのかさっぱりわからない。
理不尽に叩かれたはずだがあまりに真剣な顔に自分が悪い気がしてきた。

「……夏休み?」

「そうだ。正解だ。なのに俺達はどうして宿題をやっているんだ?」

「……クー兄さん、夏休みはあと少しですよ」

「わかってんよ!!違う!!俺がいいたいことはそうじゃねぇ!!」

バン!と机を叩くクー。
ちなみにアーチボルト家の机には中に鉄板を仕込んでいるので頑丈である(用途は色々)

「ディル!お前この夏の思い出はぁ!!」

「もちろん総体です」

つい先日総体が終わり、長刀部は優勝。
個人戦ではクーが優勝、ディルムッド準優勝したのだ。

「他ぁ!!」

「ありませんが…」

「そこだ!!そこが間違ってるんだ!!」

べしべしと机を叩きまくるクーにディルムッドは疑問を深める。

「間違ってる、と言われても…」

夏休みに入ってから練習漬けの毎日だったのだ。
何をどうしろと。
…自分はセイバーと毎日学園で会えて嬉しかったのだが。

「と、いう訳だ。遊びに行くぞ」

「わかりました。どこに?」

言い出したら聞かないクーにディルムッドはあっさり承諾する。
確かに遊びに行くのも悪くない。

「実はアイリスフィールに誘われてんだ。アインツベル家のビーチに行こうってな」

クーの言葉にディルムットは疑問を感じた。
実はアインツベル家とアーチボルト家は仲がよくない。
理由は主に切嗣とケイネスの相性にある。
そのアインツベル家と行くのか?

「…そうですか。海に」

不思議そうな顔をしていたディルムッドにクーが不敵と笑う。

「ああ。アルトリアも連れていくぞ」

「………え?」

予想外の人の名前にディルムッドが固まる。
鳩豆の顔をしているディルムッドにクーはニヤニヤと言葉を続けた。

「アイリ夫人がな。゛今年こそセイバーに可愛い水着を着せるの!!゛って張り切っててな。それは是非とも楽しそうだから参加させてもらおうと思って乗っかった。心配すんなお前もメンバーに入ってるから」

「ちょ、ちょっと待って下さい。なんで俺もメンバーに…」

「見たくないのかぁ?アルトリアの水着姿」

びしっ。
ディルムッドは盛大にフリーズした。

―セイバー、の水着姿?

よくよく記憶を探って見れば悲しいかな中学までのスク水しか見た事がない。
高等部は選択授業でしか水泳がなく、アーチャーが絶対選ばせなかったのだ(本人は気づいていない)
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