□ノート
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「ウェーイーバーくん」

「…」

ウェイバーはその苛つく声に反応したくなかった。
普段は絶対寄ってこない連中がテスト前だけやってくるのだ。
目的があからさまで嫌になる。

「ウェイバー、聞こえてる?」

「なんだよ」

「聞こえてんじゃん。なな、ちょっとノート見せてくれよ」

頼むよ。と手を合わせる同級生にウェイバーは胃がムカムカした。

―毎度毎度、

こうやって借りにくるのだ。
いやだ。
と言ってやりたいのに結局、毎回自分は言えないのだ。

「…どれ」

「数字!英語!生物!化学!」

「…」

ほぼ全部じゃないか。
毎回、回を重ねる事に増えていく要求にウェイバーは少し怖さを感じた。
しかし何もいわず机に手を突っ込みぞんざいにノートを渡した。

「お〜。マジサンキュー!早めに返すからよ!!」

―これも毎回だ

そういいながらノートは中々帰ってこないのだ。
最近わかったのだがどうやらノートは色んな所を回ってるらしい。
帰ってくるのはいつになる事やら。
連絡を取ろうにもクラスメイト、という繋がりしかないので連絡先を知らない。

「じゃあな」

「………っはー…」

ウェイバーは何も答えず、ノートを見送ったのであった。

※※※

「ウェイバー、どうかしたか?」

「え、あ…」

「何か嫌いなものでも入っているか?」

「いや…ないよ。美味しい」

「そうか」

ディルムッドは減らない弁当をみて心配そうにしていた。

「そうだな、ウェイバー。元気がないな。どうかしたのか?」

セイバーもウェイバーの顔をのぞきこむ。
二人の様子にウェイバーは慌てて首を振った。

「あ、いや。もうすぐテストだから心配なだけだよ」

「ああ。今回は全般的に難しそうだな…数学が困るか」

「ランサー、切嗣の授業が酷いとはっきり言っていいのだぞ」

「…まあな」

切嗣の授業は学園でも有名である。
まず、しゃべらない。
次に、答えない。
そして、無視する。
彼の授業は全部黒板上で行われ、生徒はそれをノートに書き取るだけなのだ。
逆を言うなら授業中、何をしてても切嗣は関与しない。
しかしテストで点が取れなければ問答無用で落とされるのだ。

「そうだ。わからない所があったんだ。たしかP59ページの…」

「ああ。俺もそれがわからなかったんだ」

「あ、僕もよくわからなかった」
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