□波紋
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※※※

球技大会閉会後アルトリアはランサーと帰らず真っ直ぐ家の道場に向かった。
無心で竹刀を振るう。
静かな道場に風を切る音が響く。

「だぁあああっ!!」

最後に気合いと共に宙を切り裂き、竹刀は動きを止めた。

「…アイリスフィールですか?」

「こんばんは、セイバー」

「随分待たせてしまいましたね」

「バレてたのね、ごめんなさい」

「いえ、お気遣い痛みいります」

アルトリアは汗を拭い、アイリスフィールに近づいた。

「…今日の事ですか?」

「それもバレちゃってるのね…でもね、今日の事がなくても何時も貴方を心配してるのよ」

「ありがとうアイリスフィール。私なら大丈夫です」

セイバーは淡々と答えた。
アイリスフィールは顔をずいっと近づけた。

「セイバー、今自分がどんな顔をしているかわかってる?」

「…?どんな、顔でしょう…」

アイリスフィールの突然な問いにセイバーはたじろぐ。
顔に手をあてて真剣に悩むセイバーの姿にアイリスフィールは困った顔をした。

「セイバー、いらっしゃい」

「……え?」

アイリスフィールはばん、と両手をセイバーに差し出した。
セイバーはアイリスフィールとその手を何度もみて結局アイリスフィールと手を重ねた。

「もう、違うわ」

アイリスフィールはそう言うとセイバーを軽く抱き寄せた。
優しい香りにセイバーはたじろぐ。

「アイリスフィール…」

「セイバー、騎士たるものが女に恥をかかせてどうするの?」

「…そうですね、すみません」

アイリスフィールの温かさにセイバーは瞼を閉じる。
彼女の温かさに触れて自分がいかに心乱れていたかわかった。
セイバーはぽつりぽつりと言葉を溢した。

「アイリスフィール」

「なあに?」

「…何も…何一つとしてランサーは間違った事は言ってません」

「そうね」

アイリスフィールは優しく答える。
セイバーはアイリスフィールの心音を感じて熱い息を吐いた。

「…なのに…私は心の何処かで裏切られた気がしたのです」

「そう…」

アイリスフィールがセイバーはさらに引き寄せる。
セイバーは苦笑を漏らした。

「ですが、私は彼の言葉に救われました。彼は私に゛許してくれ゛、そう言ったのです」

セイバーは瞳を伏せ、ランサーの綺麗なまなざしを思い返した。
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