文
□波紋
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球技大会注目のバスケ対決。
ランサーvsアチャーはランサーがアチャーに食いすがり引き分け。
その後のセイバーvsアチャーは前半、セイバーがリードするもアチャーが追い付き引き分け。
そして最終戦。
ランサーvsセイバー。
互角の戦いを繰り広げていた二人だったがランサーが最後に競り勝った。
結果、
ランサー、三勝一分け
アチャー、二勝二分け
セイバー、二勝一分け一敗
となった。
結果も総代選に影響を与えたのはさることながら、ランサーの最後の一言は一石を投じた。
波紋は広がり様々な人に影響を与えてゆく。
※※※
今回の球技大会において台風の目になったディルムッド。
競技終了後色んな人達に囲まれ動けずにいた。
見かねたクー・フーリンが人をかき分け、ディルムッドを連れ出した。
「ディル、大丈夫か?」
ただ一人、クー兄さんだけがそう言ってくれた。
やっぱり敵わないとディルムッドは思い、どこかほっとした。
「うん。ありがとう、クー兄さん。助かった」
「そうか。…皆が集りたいのもわかるがなぁ疲れてんだから容赦しろよな」
ディルムッドは自分を心配してくれる兄弟子の存在に感謝した。
何があってもこの人は変わらない。
クーはディルムッドより先に歩く。
ずっと頼りにしてきた背中をディルムッドはゆっくり追った。
「ディル」
「なんだ?」
「…俺はお前らに何があったか知らねぇ。だが…お前がやると決めたんなら、それはお前らには必要な事だと思ってる」
クーの言葉にディルムッドは目を見開き、肩を竦めた。
「…お見通し、ってこと?」
アルトリアとギルガメッシュ絡みで総代選にでる事を兄弟子には見抜かれていた。
クーは去年の総代選に出ていた。
当然アルトリアとギルガメッシュの事件は知っているが、何があったかは知らない。
しかしクーは色々と察したのだろう。
苦笑するディルムッドの肩にクーは振り返り、手を回す。
「当たり前だ。何年お前の兄弟子やってると思ってんだよ」
得意げに告げるクーにディルムッドはつい笑ってしまった。
「そうだった」
ディルムッドも何があったのか真にはわからない。
しかし、思い出される冬の記憶。
それはディルムッドにずっと警報を鳴らし続けていた。
それに従ったのだ。
「必要、なんだろうか。俺は…セイバーを傷付けただけかもしれない」
「そんなのわかんねぇ!!」
「…、え?」
堂々と言われた言葉にディルムッドは固まった。
クーは続ける。
「人の気持ちなんて、本人しかわかねぇよ。いいんだよ。お前が悩んで決めた事に意味がないはずねぇ。適当な気持ちでやってんじゃねーだろ?」
クーがディルムッドを見る。ディルムッドはしっかりとクーを見て答えた。
「本気だ。俺は…セイバーから聖杯を奪う」
正々堂々、真正面から奪い取る。
ディルムッドは金色の瞳に力を込めた。
「それでいい。…ディル。ただ、気を付けろ。総代選は゛危険゛だからな。何かあったら必ず俺に言え」
「゛危険゛…?」
「約束だぞ。ディル」
真剣なクーの顔を見てディルムッドは黙って頷いたのであった。