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□征服と激震
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一方、ウェイバーは目の前に広がる光景を呆然と見つめていた。
「…もう、めちゃくちゃだぁ…」
彼は目の前の光景が信じられず涙ながらに呟いた。
ウェイバーの前にはたくさんの生徒、コートの外野にもたくさんの生徒。
皆ぎらついた目でコートの中央の大きな男をみていた。
「よぉおおし!!かかってこい!!」
イスカンダルが愉快そうに笑う様を見て、ウェイバーはぱっくりと魂を飛ばしたのだった。
―バカっ…あのバカバカバカ!!なんでわざわざ敵に火をつけてんだよ!!
この異常な状況の元凶はもちろんイスカンダル本人にあった。
ウェイバーはゲンナリしながら午前中の事を思い出した。
※※※
毎年、ドッチボールは盛り上がらないのが定番となっていた。
なぜなら、バスケやサッカー、バレーは体育の得意な生徒がでる。
そして余った文化系、もしくはやる気のない生徒がドッチボールに参加するためである。
例年通り適当にやろうとする彼らをイスカンダルは
゛バカもん!!それではつまらん!!゛
と憤慨し、とんでもない事をいい始めた。
イスカンダル対全チーム
である。
゛どんな事をしても構わん。余に一撃を与えてみよ!!そうだなぁ…さすれば体育の点をやろう!゛
その一言に皆飛び付いた。
文化系の人間が体育の点をとるのは難しい。
だが内申にも関わるので是非とも欲しいものなのだ。
ウェイバーは皆の様子をみて血相を変え、イスカンダルに掴みかかった。
「バカっ!!何いい出すんだよ!!普通にやれば確実に勝てるし、何より誰よりも点数とれるっヅッテてぇええ!!」
「つまらん事をぬかすでないわ。やる気のない連中を倒して何が楽しいのだ」
「くぅー…ぃ、痛い!!バカ!!頭悪くなったらどうすんだよ!!」
ウェイバーは弾かれた額を隠しながら抗議した。
ここ最近弾かれすぎだ。
「何を言うか。余の叱責は頭がよくなると有名だぞ」
「んな訳あるか!!そんなん聞いた事ないぞ!大体っお前、何のためにこの競技にでるんだよ!?」
「無論、総代選のために決まっておろう」
「だったら何で自分で不利な状況作ってるんだよ!!」
「余は征服王であるぞ。置いてあるものを拾っていくなどできるか。奪ってこそ征服、犯してこそ征服である。心配せずとも余が勝つ。ほれ、坊主も位置につけ」
「……はい?」
ついでの如く言われた言葉にウェイバーは固まった。
「先方には話をつけておる。そなたは外野だ」
「ちょ、何で!?お前が僕の代わりにでるんだろ!?なんで僕もでるんだよ!!」
「はっはっは!余の勇姿をとくとく見よ」
「話きけぇええ!!」
そんな言葉は一切無視。
ウェイバーはイスカンダルに担がれコートに向かったのであった。