□いちご
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それは甘酸っぱい。
青春の味。

「ランサー…」

とろん、とアルトリアは目を伏せた。
湖面を連想させる碧色の瞳は潤み、雫がこぼれ落ちそうであった。
頬は薔薇色。
唇は瑞々しい桃を思わせた。
その唇に吸い寄せられるように―…苺が放り込まれた。

「はむっ…もっもっ…ランサー。非常に熟れていて美味しい…」

「これは頂き物でな。セイバーが好きだから持ってきたのだ」

「ありがとうランサー!」

目を輝かせ、無防備にランサーにすり寄るセイバー。
普通ならバカップルが行う行動である。
しかし実際は餌付けされているだけなのである。

―空気はこんなにあまったるいのにな!!

ウェイバーは苦さを通りこして呆れていた。
今日はランサー、セイバー、ウェイバーの三人でお昼を食べていた。
ランサーは親ドリがヒナに餌を与えるが如く甲斐甲斐しく世話を焼く。
一方セイバーはヒナ以上の貪欲さでランサーの弁当を食していた。

「もう時間だ。二人とも、私は用事があるので先に失礼する」

「ああ。じゃあ放課後」

「またなー」

セイバーはランサーに米粒一つない弁当を返却し、席をたった。
二人はセイバーを見送ると再び弁当に向かった。

「…アルトリアは相変わらずよく食うなぁ」

「ウェイバーが少ないんだ。もっと食べろ」

「これ以上は入らないよ」

無理無理、とウェイバーが手を振った。
ランサーは困ったように笑った後、苺を差し出した。

「ウェイバーもいるか?」

「いいのか?それ、アルトリア用だろ?」

「いいさ。うまいものは皆で食べるものだ」

ウェイバーは差し出された苺を有り難くもらった。
甘い香りがする。

「…ディルムッドって器用貧乏だよな」

「誉め言葉ではないな」

ランサーが肩をすくめた。
様になっている。

―いい奴なんだけどなぁ

ランサーはチャームの呪いのせいで男子から恨まれている。
しかしウェイバーはこれほど男気にある男を知らない。
初めて会った時には女子に囲まれているのを助けてくれたのだ。
さっきも惜しげなく苺をくれし、ウェイバーの食生活を心配しつたまにおかずを作ってくる。

「…だぁー!!あんだけピンクオーラだしてんのに!!なんでまだ付き合ってないんだよ!!」

「まだって…」

「もう一回ちゃんと告白しろよ!!見てるこっちが恥ずかしいんだ!!」

実はランサーは一度セイバーに告白している。
しかも公開告白。
そして、スルーされた。
全校生徒唖然の結果だった。
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