□なきぼくろ
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「…」

ディルムッドは改めてその子をみた。
全くスキがない。
整然とする戦気は裏がなくディルムッドは心踊った。

「こい!!」

「おぅ!!」

けしかけると迷いなく突撃してきた。
真っ直ぐな剣撃。
ディルムッドは長刀をさばいて応じる。

―もらった!!

ディルムッドは素早く攻撃に転じた。
完璧なカウンターで彼女を襲う。
しかし攻撃をいなされた彼女は即座に対応。
カウンターを恐れず体を跳ねさせ新しく剣を繰り出した。

「たぁ!!」

「ぐっ…」

ディルムッドはカウンターを諦め防御に入った。

―かみひとえ、

大人でも避けれなかったはずのカウンター。
攻撃する事でのりきった少女の機転と身体能力にディルムッドは驚愕した。

「すまなかった。…おまえは、りっぱな戦士だ!会えてうれしいぞ!」

「しゃざいは受けとる。わたしもあなたに会えて光栄だ!」

叫びあえば気分が高揚する。
血が騒ぎ、魂が震える。
ディルムッドとアルトリアはニヤっと笑い合い構える。

「今度はこっちからいくぞ!!」

「よし!!こいっ!!」

バチン!バチン!

二人は幾度かの攻防を経た。
夕方の公園に響き渡る強く、激しい、音。だがその音は二人の歓喜を現していた。

「「っ…、だわっ…」」

そして、二人は同時に膝をついた。
二人とも致命的な一本は取れず先に体力が限界になったのだ。

「はぁ…はぁ…やるな!」

「っ、は…、は…あなたも!」

二人は肩で息をしていた。
そしてディルムッドが息を整えているとその子は側にやって来て手を伸ばした。

「…あ」

ディルムッドはその手を見つめ固まってしまった。

「どうした?」

「…いらない」

差し出された手を避けるようにディルムッドはうつむいた。
アルトリアは何も言わずに隣に座った。

「あなたはどこの方ですか?みた事ありません」

「…ああ。昨日この町にきたんだ」

「そうですか。今はどこに?」

「…」

ディルムッドは黙りこんだ。
先ほどまでの清々しい気持ちはなくなり塞ぎこんでしまった。

―彼女は女の子だ…

ディルムッドは差し出された手をみた時、その小さい手を見てそう思ってしまったのだ。
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