□なきぼくろ
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ディルムッドが冬木市にやってきたのは小学生に入るちょっと前の事だった。
愛くるしい顔は皆から好かれたが本人はずっと暗い顔をしていた。

「ディルムッドー?ディルムッドはどこいったのかしら?」

「ソラウ。ディルムッドならついさっきどっかに消えたぞ」

「どっかにって…貴方!ディルムッドのお義父さんならそんな無責任な事言わない!」

「む、無責任?いや、あやつは自分で出ていったのだぞ?大丈夫であろう」

「話の論点が違うわ!!あの子はこっちに来たばかりなのよ!!」

「だ、…だから?」

本気できょとん、としているケイネスにソラウはぶちきれた。

―…悪い人ではないけど!!

鈍い、鈍すぎる。
あんな小さな子が全く違う環境にきたら戸惑い困るに決まってうるだろう。
加えてあんな暗い顔をしていた。
そんな状態の子供のほって置く親がどこにいるのだ。

「もういいわ!!早く探してきてちょうだい!!私はあっち、貴方はそっち!!」

「わかった…」

ソラウは、いまいち理解していないがとりあえずいう事を聞くケイネスに深いため息をついた。

※※※

「だぁあ!!、たぁ!!」

公園で長刀を振るう少年がいた。
小さな体から発せられる闘気は大人さながら…というより憤りを爆発させる様は子供とは思えなかった。

「だぁああっ!!…はっ、はぁ……、そこにいるのはだれだ!!」

覇気を纏ったままディルムッドは吠えた。
その先にはディルムッドよりも小さな女の子がいた。

「しつれいした。あまりにつよい闘気だったので見にきてしまった」

「……」

相手が女の子、とわかってディルムッドは顔をしかめた。
今、女の子には近づきたくもなかったのだ。

「すばらしい長刀です。わたしと一戦お願いします!」

「ことわる。女とたたかう気はない」

凛とした声をディルムッドはにべもなく断った。
そして彼女を無視して練習を続けようとした。
しかし、次の瞬間ディルムッドは戦慄した。
小さな女の子から沸き上がる戦気に押され反射的に防御体制を取った。

バキン!!

木が強くぶっかった。
そのままつばぜり合いに入る。

―、なんという…

押しだ。
ディルムッドは全力をだして押し返すのが精一杯で潰せなかった。
押し退けられると女の子は素早く後ろに飛び距離を取った。
互いに体勢を建て直しにらみあう。

「女だからとなめるな!」
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