文
□征服王現わる
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体育先生は去年の秋頃に突然辞めた。
ランサーだけは何故辞めたかを知っている。
今日新しい先生の初授業である。
「余がイスカンダルである!!」
ぐわぁぁああん、とグランド中に野太いが張りのいい声が響き渡った。
マイクなしでここまで聞こえる声があるとは、とランサーは感心していた。
「うむ。前任の先生は都合により辞められた。今日から余がそなたらを導く。ま、一つよろしくな」
威厳のある雰囲気が最後の一言で一気に親しみやすく感じた。
周りの生徒も同じ事を思ったらしく、空気が柔らかくなっていた。
「…うわぁ。僕はついてけないなぁ…」
「ウェイバー。良さそうな先生ではないか」
「いや。僕は体育会系じゃないし。前の先生みたく適当にほっておいてくれる先生の方が良かったんだ」
ぶつぶつとランサーの隣で呟くのはウェイバー。
彼はランサーと同じクラスで、セイバー達に続きよくつるむ仲である。
「そういえば今日は珍しく授業に参加しているな」
「捕まったんだ!無理やり連れて来られたんだ!!」
去年は先生に休みたいといえば後でレポート提出する条件でいくらでも休めたのだ。
しかし今回イスカンダル先生に言いに行くと問答無用で連れて来られたらしい。
「あー知っての通り来月は球技大会である。皆も準備に励んでおるな」
毎年、新年の始まりはクラスの仲を深めるために球技大会から始まるのだ。
「今回は余が男女混合にした。皆チームでそれぞれ力をあわせて頑張るがよい。ちなみにだ。今回はもう一つルールを変えた」
え?、と疑問符を浮かべる生徒にイスカンダルはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「余達、先生も参加する!!」
「「……はぁああああ!?」」
よく通る声で言われた内容は全く許容範囲を越えていた。
叫ぶ生徒達を押し退けランサーは前に出た。
「イスカンダル先生、何故そのような事をなさるのです」
「んん?楽しそうだからも理由の一つだが、真の目的は聖杯である!学校の行事に参加せねば取れぬであろう?」
「っつ!?な、んと…」
「イスカンダル先生!!どういう意味です!!」
セイバーが聖杯、と聞いて割って入ってきた。
ランサーは苦い顔をしながらイスカンダルを睨んだ。
―とんでもない事になった
彼女と聖杯。
そしてアーチャーには嫌な因縁があるからだ。