玩具 ━ オモチャ ━
□支配
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「んっ…んふぅ…」
今日も埃臭い旧校舎に、切ない喘ぎ声が小さく響く…
― 和則が浩二と理不尽な契約を交わしてからそろそろひと月が来ようとしていた。
浩二は日に日に横暴さを増し、和則の心と身体を支配する。
この頃になると浩二は和則の学校生活のすべてを束縛する様になっていた。
登下校も昼休みも授業の合間の休憩時間さえ、浩二は和則が自分のそばを離れる事を決して許さなかった。
朝夕の部活動だけは許可されたものの、それも練習が終わると必ず浩二の元に帰らねばならない。
そして浩二が満足するまで旧校舎のあの教室で弄ばれる日々…
完全に自由を奪われ浩二に縛りつけられてしまった和則の高校生活は、もはや苦痛以外のなにものでもなかった…
そんな和則の唯一の救いは休日だけだった。
『玩具にも休息は必要だからな。』
浩二はそう言って学校がない日だけは和則を解放してくれた。
『ただし俺に黙って俊や他のヤツらとイチャついたりしたらただじゃおかねぇ…お前の事はなんでもお見通しだって事を忘れんなよ。』
そう言葉で和則を縛りつけて…
だが毎日毎日人形のように弄ばれ心身共に疲れはてている和則に、休日にどこかに出かける気力など全く残ってはいなかった。
唯一朝夕愛犬の散歩に行く以外、自宅を出る事はなくなった。
浩二の伯父が営む大手会社の幹部のひとりである父は、休日もほとんど取引先との接待や会議で家を開けている事が多い。
そのため和則が引きこもりがちになっている事に父親が気づく事はなかった。
(父さんだけには心配かけたくないッ…)
和則はそれだけを支えに父親の前では明るく振る舞い続ける。
そして日曜日の夜がくる度、薄暗い自室のベッドで膝を抱えて泣き続ける日々…
(もぅ少し辛抱すればGWになる。そうしたら少しの間浩二から解放されるッ…)
大型連休を間近に控え、和則はそれだけを心の支えにつらい毎日をどうにかやり過ごしていた…