銀魂小道

□君の声
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君の声 ―銀時―

馬鹿でかいあの声で、馬鹿みたいに笑う馬鹿。
そんな馬鹿が突然言い出したのは、やっぱり馬鹿みたいな夢物語だった。

それでも俺は、さほど驚きもしなかった。
こいつはいなくなる、そう、うすうす思っていたから。
こんなところに居たら、だめだと思っていたから。

だから、屋根の上で話を持ちかけられたときは、普通に話せるはずだった。
だけど、何を言っていいか分からなくなった。

そうか、とか。いってこい、とか。俺はここにいる、とか。まじめな顔すんな、とか。
・・・行くなよ、とか。

言える言葉はたくさんあったのに、どれを選べばいいか分からなくて俺は逃げた。
いつもの馬鹿みたいな笑い声が横から聞こえたとき。
俺はすっげぇ安心した。

行くなよ。
そう言ったらきっとあの馬鹿を困らせる。

出発の朝。ヅラも高杉も見送ろうとはしなかった。
きっと、自分の気持ちに整理がつかないんだろう。
俺だって、整理なんてできるはずが無い。むしろつけるために見送りに来たようなもんだ。

なぁ。戻ってこいよ、待ってる。

馬鹿のくせに人の気持ちを読むのだけはうまい野郎め。
ああ、いけないんだよ。俺は、お前みたいに飛べないから。

なぁ、だからさ。
戻ってこいよ?待ってる。


END

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