銀魂小道

□君の背中
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君の背中 ―高杉―

はじめてあったとき、あいつは気に食わない奴だった。
育ちも思想も、違いしかなかったからかも知れないが。
何より、いつも俺の前を歩いているのが気に食わなかった。

そのくせ、誰かに呼ばれれば簡単に振り向いて、人懐っこい笑顔を惜しげなく見せる。
俺はそれがなんとなく面白くて、いつも後ろからあいつの名前を呼んでいた。

いつしか、俺はあいつを後ろから呼ぶのが好きになっていた。

血しぶきが飛び交う戦場で、俺は何度もあいつを探して。
残響くすぶる戦場で、俺は何度もあいつを呼んだ。

それがだんだん、自分を確かめる行為になっていった。
俺は、ここで。
俺は、俺で。
あいつが俺を見て笑うたびに、一つ一つが確かめられる気がしたから。

抱く思想も、見据える未来も、何もかもが違ってしまっても。
俺はまだ宇宙を見上げてあいつを呼ぶ。

もしも、あいつの見る未来が、あいつの見る世界が俺にも見えるようになるのなら。
お前の背中に、俺が並ぶ日が来るのなら。
・・・惜しむことなど、何もないと。
所詮、思うだけだけど。


俺はおなじ場所で足踏みを繰り返し、立ち止まる。

なぁ、俺がここからお前を呼んだら、
あの日のように、また振り向いて笑ってくれるか?

                   
     

END
 

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