恋愛モノa
□静寂
1ページ/2ページ
白くなった髪をそっと撫でる。
薬品臭の漂う病室で変わらず眠り続けているあなた。
会いに来ても、かける言葉が見付からなくなったのはいつから?
コーヒーを飲むのに、何のためらいもなくなったのはいつから?
あなたは確かに此処にいるのに、その声が、その微笑みが、優しい手の感触が、私の中からじわりじわりと消えてゆく…。
残酷なのは、私を残して永遠に眠り続けるあなた?それとも、愛していると言いながら、少しずつあなたを忘れてゆく私?
ゴメンナサイ…こんなに弱い人間だったなんて驚きでしょ?
…お願い、帰って来て。
あなたに出会って、共に生きる喜びを知ってしまったから。
あなたに出会って、孤独を知ってしまったから。
「じゃ、依頼人と約束があるから…。また…。」
また…独りで闘ってきます…。