漆黒の嘘つき
□第六話
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《だからね、今池袋では『ダラーズ』っていうチームがすごいんだって!》
受験も合格し、入学手続きも滞りなく終了した奏は、先日中学校を卒業し尚入学式を間近に控え、暇をもてあましていた。
叔父の仕事の手伝いも最近は減っているし、学校もない、彼女がすることといえば池袋を散策するのと本を読むくらい。
あれから、折原臨也とは連絡を取っていなかった。
というと、倦怠期のカップルかの様に思われるかもしれないが、ただ単に奏が「用もないから」と連絡を取っていないだけだった。
[私は見た事ないんですよね、『ダラーズ』って、噂はよく聞くんですけど]
普段参加している奏も今日は見る側に回っていた。
このチャットはログインしなくても閲覧することはできる。
三人の会話は参加しなくても面白いので退屈凌ぎにはなる。
《地下に潜ってるぽいですからねー! でもネットとかでは凄い騒がれてますよ?》
【そうなんですかー、甘楽さん、池袋に詳しいんですね】
《それほどでもないですよー!》
《あ、じゃあじゃあ黒いバイクの人の話は知ってます?》
【黒いバイク?】
[あー]
《最近新宿とか池袋でも話題の奴。昨日ニュースにも出てたよー》
――あれか。
昨日の夜、夕食の準備を見ながら見ていたニュースを思い出す。
「決定的瞬間」とか、そんな類のもの。
ヘッドライトをつけずに走る黒いバイク。
浮世離れしたそれは、池袋の人間ならば誰でも知っている都市伝説だった。
初めに言ったのが誰か、何てそんなことを考えてしまうと、宇宙が誕生したのはいつか、とか途方もない話の仲間入りをしてしまう。
ともあれ、今池袋を騒がせている黒バイクに、奏が興味をもっていないわけではなかったので、そのまま傍観の姿勢は崩さない。
ただ長期に見る気が満々なのか、手元には某レンジで暖めると美味しいチョコチップクッキーのファミリーパックがある。
それは実は彼女の今日の夕飯だったりするのだが。