漆黒の嘘つき

□第四話
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『あ、受かった』


普段は学校にいる時間に大きな茶封筒から取り出した白い紙を見てポツリと呟いた。


その紙に書かれた内容はシンプルに表すなら「合格」。


先日奏が受験した私立来良学園高等部の合格通知だった。



紙が入っていた封筒は分厚く、ハードカバーの本が一冊くらいは入りそうな大きさで、その中には来良学園の入学案内等が入っているのだろう。


『父さんに書いてもらわないと』


――もしくは叔父さんに父さんの名前書いてもらおう。


自分で入れたインスタントコーヒーを飲みながら奏は携帯電話を取り出す。


合格したことを学校に連絡し、それから、父、叔父、友人に連絡するためだ。


しかし、その連絡しようとした手はピタリと止まる。


『あー。もう』


彼女の右手親指は、電話帳を開くボタンではなく通話履歴を押そうとしていた。最近身についたばかりの癖である。


通話履歴の一番上には、現代では少し珍しい名前が表示されていた。


「折原臨也」


あのデート(彼女曰くモドキ)から約1ヶ月と少し。ほとんど間を空けることなく彼女達はマメに連絡を取っていた。


否、決して色気のある理由ではなく、ただ単に奏が分からない問題を折原臨也が解説していたというだけなのだが。


『学校学校と』


――折原さんへも電話すべきかなぁ。


それは当然、彼のおかげで志望校合格が出来たのだからすべきである。


だが、


――まぁ、あの人はどうせ知ってるだろう。


それをしないのが久遠寺奏だった。


まぁ、確かに。臨也だったら奏自身が知る数日前に知っていそうなものだけれども。



同じ携帯電話で何回も通話が行われたが、


彼女が通話履歴を押すことはなかった。
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