漆黒の嘘つき
□第三話
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あれから数分。
折原は自分が予想していた通りの事項に少しがっかりしていた。
予想していた事項、つまりは奏の服装のことである。
彼女の今の格好は、少し寒くはないだろうかと思う、白いTシャツにグレイのダウンベストに黒のジーンズ、それからツバの上にスタッズが並べられている黒いキャスケットといったものだった。
曲がりなりにも「デート」といったのだから、それなりの服装を少しだけ、ほんの少しだけ期待していた臨也はすこし落ち込んでいた。
『どうしたんだ折原さん』
「いや、なんでもないよ」
そもそも彼女は自分のことを「少女っぽいもの」と称したのだからそんなことをしないことくらい検討はついていた。
それでもまぁ、23歳の青年だ。夢くらいは見たいのだろう。
『これからどうすんの?』
そっちが誘ったんだからどうにかしろ、といった目でこちらを見る奏を見て。とあることを思いついた。
「デパートに行こうか」
『は?』
多分この少女は、そういった服をもってないのだろう。
ならば、自分が買ってやればいいのだ。
そのことを臨也は思いついた。
『デパート行ってどうすんだ?』
「まぁまぁ」
ついておいで、といわんばかりに臨也は奏の手を引く。
足取り軽やかに、そして決して池袋にいる苦手な奴に絶対に見つからない道を歩む臨也はまだ知らない。
自分が彼女にプレゼントを贈った最初の異性であるということ。その優越感に浸れるのはそう遠くないこと。
そして、その優越感の正体でさえ、彼は気づきもしなかった。