漆黒の嘘つき
□プロローグ
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「君は怒らないんだね」
『別に、あんたが騙したわけじゃないだろ。ってか、騙されたあいつも悪い』
「ふんふん、続けて」
なんか。こいつの笑顔ムカつくな。殴りたくなってくるよ。
『大体おれは自殺する気は無いんだ。自殺って痛いし怖いじゃん。だったら適当に生きて事故死したほうがはるかにましってもんだ。痛いの嫌だし』
「じゃあ、何で君ここに来たの?」
友人に連れてこられたと説明すると彼は大爆笑を始めた。
「自殺するのに友達連れか!! アハハハハ!! これは面白い!! 今までに無い例だよ! ハハ八ッ、で、君も死ぬかもしれないのにのこのこついてきたの?」
『自殺ってどうするのかな、って興味本位でついてきました』
馬鹿笑いに退いたので、少し敬語になった。だって怖かったぜ? いやマジで。
興味本位という言葉に受けたのだろうか、「これ以上俺を笑わせないでよ」と笑をこらえた声で言ってきた。
いや、かってに笑ってんのあんただろ。
「まぁ、いいや。それで自殺の仕方を知ってどうするつもりだったの?」
『別に。ああ、そういう方法もあるのか。小説化志望の人間にでも教えてやろう』
「なるほど。君は俺に似てるようで似て無いね」
『出会って二時間と三十一分程度で言うのも何だけどさ。虫唾が走るからやめてくれ』
「ひどいなぁ」
さしてひどいと思ってなさそうな顔で奈倉は言う。