復活短編

□春紫苑
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見飽きたコンクリートに、見慣れた赤い液体が飛び散る。


周りの人間は目の前に広がる血とグロテスクな光景を見て喧しい悲鳴を上げた。


それ以前に聞こえていたのは、けたたましいブレーキ音。


交通事故というものが僕の目の前で起こった。


小説なんかでよくあるような少女が猫を庇って車の前に飛び出した、というのが事故の内容で、僕はそれを一部始終見ていた。


車の前に飛び出した少女。


扇状に広がる髪に血がこびりついていく中、そんなこと気にもせず、目を開いて硬く閉じた腕を開いて閉じ込めていた猫を開放してやる。


自由に動けるようにしたのか、それとも自分の血で汚れないようにとの配慮なのかは分からない。


ただ彼女は、自分を助けてくれた人間に礼を言うわけでもなく自由気ままに動く猫を見て薄く、淡く、微笑んで目を閉じた。



猫を庇うなんて愚かで、
車の前に飛び出すなんて愚直で
自分のみより野良猫を心配する滑稽な彼女を僕は、


――美しいと思った。


思ってしまった。


自分に敗北という二文字を刻み込んだ彼にも似た彼女を。


涙が出るほどに綺麗だと。
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