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□触れませう.2
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手を払われた時、ショックだったというのもあるけれど、ああやっぱりなという表現がしっくりと来るような、そんな感覚だった。まず骸が他人とベタベタする様を想像できなかったし、骸自身がそれを望んでいるようにも見えなかったし。
しかし時折、俺が些細な何かをしている時に見せる不思議そうな視線とか、いわゆる一般と言われるであろうことをしている時に見せる興味津々な態度とか(隠しているつもりなのかもしれないけれど)、そういうのを見てしまったら、なんとなく、こいつのことをもっと知りたいとかもっと仲良くなりたいとか思ってしまったりして。
俺も当時、仲の良い友達って呼べる人達が一気に増えてそんなに経っていない頃だったから、若干感覚が麻痺していたのかもしれない。山本とか、よく肩組んできたり頭撫でてきたりとかしたし。
だから骸の腕に触れたとき、あ、俺骸に触っちゃったって思って、そしたら冒頭。
別れてから、悪いことをしてしまったなあっていうのと俺が悪いのかなあっていう思考の無限ループね。
ああいやうそ、考えてる余裕なくて超へこんだ。振り払うほど嫌だったのかなって思って、そうだろうなあって一人で納得して、しばらく骸に会わないほうがいいのかもなって思った。しかしそもそもいつも骸がクロームの体を借りて出てきてたから、骸が来ようと思わなきゃ俺の前に出てくることはないわけだ。
それで、案の定というべきかやっぱり骸はそれきり俺の前には出てこなくて、そこで俺はまた密かにへこんだわけ。
確かにクロームは可愛いよ、でもそうじゃなくってさ。
結局それからまともに会うこともないまま俺は骸が大嫌いなマフィアになっちゃって、骸も水牢から出す代わりにボンゴレに拘束されて、これって俺と骸の関係としてすごく良くない状況でさ。
これ以上骸に嫌われる要素とかないんじゃないかってくらいじゃない?あいつ今も俺の顔すらまともに見ないし。いつも嫌な相手でも貼付け笑顔なのに、無表情だし。どんだけ嫌なんだよ。
つか学生時代も嫌ならわざわざ体借りてまで出てくんなよっていうか、力使うからすぐ疲れるからとか言っておきながらなんで毎度毎度飽きずに来てたんだよあいつ。
ああ、なんだかもう訳が分からない!










「…で、それを言いたいが為に俺を呼んだのか?」
「うん、ほかに言える人いなかったし。それに最近の骸の態度があからさますぎて」
獄寺くんはじゃあ今すぐ野郎をシメて吐かせてきます10代目!とか走っていきそうだし、山本に相談しても、じゃあまずは握手から始めたらいんじゃね?とか言いそうだし…とぶつぶつ呟いている現ボンゴレの頭首を見遣り、彼の家庭教師は呆れたため息をついた。
「本人に聞きに行きゃいいじゃねえか、女々しいなお前」
「タイミングが見つからないんだよ…俺だって」
「聞きに行こうとか本気で思ってんのか?俺にはそうは見えねえな、うぜえ」
「うっ…」
ばっさりと切り捨てた家庭教師様を恨めしげに睨み、しかしあながち間違ってもいない見解に舌を巻く。綱吉の中でも出来ればこれ以上面倒なことはしたくない…ことなかれ思考が働いていることも事実−さすが先生、俺のことをよく分かっていらっしゃる。
「まああれだ、これで相手が女だったらなあ、俺も色々アドバイスしてやろうという気になるもんだが」
悩ましげに眉を寄せ、肩に乗せた相棒を撫でながら言ったリボーンに対し綱吉は片眉を上げた。
「…リボーン、そのアドバイス違うだろ。俺は骸について言ってるんだけど」
「だから、その骸をオトしたいんだろ」
「いや、…え?なに?どうなってんの?」
「いいかツナ、ボスたるもの部下には信頼されなきゃならねえ。それこそ老若男女関係なくだ。ファミリーの中にひとつでも異端分子があったらそこから亀裂がうまれる。それを防ぐ為にもボスはファミリーを愛し同時に愛され、守り守られていくという義務がある。これは俺が昔からずっと言ってきたものだ。分かるな?」
「…はあ」
「それがなんだお前は。守護者一人にすら愛されずにだらしのねえ。いいか、何がなんでも骸をオトせ。仲良くなりてえんだろ?好都合じゃねえか」
音も無く立ち上がり綱吉のいる執務机まで歩を進め、リボーンは肩に乗せたレオンの頭をちょいとつついた。すると、レオンの体から光が溢れ、まばゆいひかりがあたりをてらす…−
「ってポ●モンじゃないし!」
「冗談だぞ。よく見ろ」
「うっ…こ、これは…!」


深い赤と蒼の瞳に長い睫毛、整った顔とまさに秀麗と言うべき体の造形。その身長はすらりと高く背中に垂らされた藍色の長髪は艶やかで、体のラインにフィットした黒のカッターシャツがその細さを際立てている。そして左の手首に嵌められた黄緑色の腕時計の時計盤部分には二つの目玉がキョロキョロと…

「…レオンだここ」
「出来るだけ奴を再現しようとした結果こうなった。レオン顔のあいつとか黄緑色の肌とか嫌だろ?」
「いやそれは無理だ…!というか骸にバレたら殺されるよ!」
「んなこた自分で何とかしやがれ。それより…」
言いながらリボーンは自らのボルサリーノを目深に被り直し、反対の手の細い指で綱吉の顎を撫で上げ強引に視線を合わせる。
「いいか、今だけこいつを貸してやる。せいぜい無い脳みそフル稼動させて骸の奴をオトす口説き文句でも考えるんだな。最悪荒療治でも構わねえ」
「いや、俺別に骸を口説きたいわけじゃなくて、あいつが訳わかんないって言ってただけで、というか荒療治とかなんだよそれ…」
「まだ分からねえか。…まあいい、ここは自分で何とかする事だな。俺は帰る」
くるりと回れ右をして部屋を出ていこうとしたリボーンだが、ふと足を止め再び綱吉の方へ向き直りつかつかと戻ってきた。そして一言。


「いいか、くれぐれも俺の相棒を汚してくれるなよ。手を握るのは許すがキスもそれ以上もナシだ」
「レオンに手なんか出さないよ!というか骸だってそんな目で見てないから俺ー!!」

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