企画
□もしも、政宗がレストランの一流シェフなら…?
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どーも!
俺はとあるレストランの見習いシェフっす!
見習いとしてこの店に身を置いて早半年。
正直キツイ。大量の仕込みを任されるのは進歩だけど…キツ過ぎ!
そりゃあ、涙も出ますよ。
「おい、見習い!!何だコレは!
わしは微塵切りをしろと言ったのじゃ!これじゃ粗すぎるわ馬鹿めっ!!」
「……だっ、だって……もう無理っす…!!目が…っ」
「えぇい!!鼻にティッシュでもぶっ差してやらぬかっ!!」
ズボッ!!
「ΣΣぐぇっ!!」
涙を流しながら必死に玉葱の微塵切りに勤しんでいた俺に罵声を浴びせながらお構い無しにティッシュを鼻にぶっ差したこの人こそ、この店を取り仕切るオーナーシェフの政宗さん。所謂俺の師匠だ。
「何故玉葱が目に染みるか、そんな事も分からぬのか!!
玉葱にはアリルプロピオンという成分が含まれていて切った時に硫黄化合物が気化し、目と鼻の粘膜を刺激しするからじゃ!!その位勉強しておけ、馬鹿めっ!!」
「ア…リル…………プロ…デュース?」
「アリルプロピオンじゃ!!プロデュースしてどうする馬鹿めーっ!!というか何をプロデュースする気じゃっ」
いや、それは自分にも分かり兼ねます…。
「仕方ない、これも着用しろ」
「ゴ、ゴーグル!?そこまでするんっすか…!?」
「これは特例措置じゃ!!いつまでも慣れぬ貴様が悪い!!
それとも…見習いの分際で口答えする気か…?(脅」
「Σはいッ!!やります、張り切ってやらせて頂きますっ!!」
俺は必死に玉葱を刻んだ。
ただひたすら、理想と現実の余りのギャップに揺すぶられながら。
(やっぱ向いてねぇのかな、俺…)
熱いものが目頭と目尻から流れて行った。
「…ゴーグルと鼻ティッシュでも染みるじゃねぇか…っ」
玉葱のせいじゃない事は分かってたけど、今は玉葱のせいにさせてくれ。
悪いな、玉葱。
「…見習い、休憩じゃ。
こっちへ来い」
「……まだ終わってないんですけど」
「いいから来い」
「……はい」
本当、強引で勝手な人だな。
と心の中で悪態を吐きながら付いて行くと、そこには一皿のパスタが置いてあった。
「腹が減ったじゃろ?食え」
「まあ…そうですが……いいんすか?」
「いいと言っておる!早く食わぬか、馬鹿め!!」
おまけに一言余計な人だな。
と思いながら、俺は椅子に腰掛けおもむろにパスタを啜った。
「う………、
うんめぇーーーッッ!!俺、こんな旨いの食ったの初めてっす…!!」
大袈裟っぽいけど、これは大真面目だ。
マジで旨い。
「あ、当たり前じゃ、馬鹿め…!!なんと言ってもわしが作る料理は天下一品じゃからなッ!!」
言葉では威張り腐ってるのに、顔は真っ赤だった。
照れてんのか…?
うん。照れてんだな、これは。
「貴様は勘違いしておる。貴様だけが辛い訳ではない」
「え?」
「貴様の今の境遇はシェフを目指す者ならば誰でも通る道じゃ。それで挫折するならば貴様の志などそれまで、という事じゃ」
「………」
「貴様は一流のシェフになりたいのじゃろ?ならば、歯を食い縛ってでも乗り越えてみろ。根性を見せてみろ」
「……師匠、」
…そうだ。
俺だけが辛いんじゃない。
師匠も俺以上に辛かったのかも知れない。苦労したのかも知れない。
それを乗り越えたからこそ、今の彼があるんだ。
こんな絶品料理を作る程の…。
「……俺、頑張ります…!乗り越えてみせます!!
そしていつか、俺も師匠のような料理を作りますっ!!」
俺の新たな第一歩だ。
これからは何があっても弱音なんか吐かねぇ。根性で乗り越えてやる。なめんな、このヤロー。
絶対、叶えてやる…!!
この人を越えてやる…っ!!
「うむ、その威勢と元気があれば大丈夫じゃな。
では、それを食い終わったら今度はジャガイモ三箱分皮剥きじゃ。30分で終わらせろ」
「ΣΣさささ、30分……!?」
…頑張れ、俺。
負けるな、俺。
一流シェフを目指す俺の苦労と努力の日々はまだまだ続く。
◇◇◇◇◇◇◇
何だかんだで政宗は面倒見がいいと思います(^^)
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