現代戦国漫遊録

はじめての城下〜珍道中編
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凛の行方は依然不明のまま。

凛を追う清正や悪足掻き隊を中心とする捜索隊にやがて政宗や元就らも合流。



「茶屋に戻った可能性もあるのでは…」

「1人で戻れると思うか?あの凛が」

「「「「「「…………」」」」」」

確実に迷子になるよな、と皆の頭の中が一致した瞬間。


「そういや凛はお金持ってないしね」

「払い方すらも分からないのでは…」

「一応教えたのだが…理解は出来ていなかったな」

……だろうね。




「…兎に角手分けして探そう」

元就の呼び掛けに皆が頷き、四方に散って行く。




「…あの、政宗殿……。
お二方は…どうしたら…」

幸村がチラリと目を向けた先――褌姿の双璧が木に括り付けられていた。
二人とも白目なのは…何が起きたか言わなくても分かりますよね。


「幸村、情けは一切掛けるでない」

「あ、はい…」

既に2人の周りに人がチラホラと集まっていますが、目を覚ました時が仕置きの本番、と言った所でしょうか。


その頃、渦中の人物・凛は――













『……はぁ…、無い……』

凛は1人、河原で這いつくばって何かを探しているようだった。



『…簪無くすし……お腹空いたし……散々だよ…』

凛はヘナヘナと座り込み、空を見上げた。

簪を落としてしまったらしい凛。しかし見付からず四苦八苦。
そして朝から何も口にしていない凛の腹は限界に近付いていた。

だからと言ってねねが付けてくれた簪なので諦める訳にもいかない。
きっとねねなら笑って許してくれるのは明白。しかしそれでは凛の良心が納得いかない。


『頑張らないと…。何としても探し出さなきゃ…!』

自分を奮い立たせ、意気込んだ凛は再び捜索を開始。
その時、とある人影が凛に近づいていた。





「…そち、何をしておるのじゃ?」

『……へっ?』

振り向くとそこには自分と同年代であろう、女の子が不思議そうに凛を見つめていた。
溢れる程の大きな瞳、雪のように白い肌、紫を基調とした独特な衣を纏った少女の目映いばかりの可愛らしさに、凛は目を丸めながら凝視。


(か、可愛い…っ、お人形さんみたい……!)


「大丈夫か…?顔が赤いのじゃ」

『はぅ…!すみませんっ!!貴女が余りにも可愛くてついついガン見してしまいました…;;』

「ほむ…?可愛い…?
そちの方が可愛いと思うぞ!」

『Σえ!?そそそそれは絶対ないですよ…っ!』

「そんな事ないのじゃ!わらわが言うから間違いないぞっ!」

『はぅッ…!』

ずずい、と顔を寄せ笑う少女の余りの可愛さに、凛は倒卒しかけた。




「で、何をしておったのじゃ?」

『あ…、ええっと、簪を無くしてしまって…。探してたんです…』

本来の目的を忘れていた凛は漸く思い出し、苦笑いしながら答えた。


「そうか…それは大変じゃ…!
わらわも一緒に探すのじゃ!」

『え…、そんな…!貴女のお手を煩わせる訳には…!』

「何を申しておる!困っておる人が居たら助けるのが当然じゃ!
それに、わらわはそちがとーっても気に入ったのじゃ!」

『は、はぅ…!』

ニッコリと満面の笑みを向ける少女にまたしても倒卒しかける凛。


何とか意識を保ち、凛も笑顔で承諾した。


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