現代戦国漫遊録
□懲りない奴ら
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ある木曜の夜。
夕食も終わり、皆がリビングで団欒の一時を過ごしていた時の事。
「ねぇ、凛ちゃん。次は私達の所へ来てくれるんだよね?」
『………?』
不意な元就の問いに、凛はポカンと口をあけ硬直した。
(………覚えてない…約束したっけ…?)
「あれ?忘れちゃったの?
…それは残念だね、」
『………』
空笑いしながら目を伏せる元就は本当に残念そうで、その途端、凛の中に妙な罪悪感が芽生え出した。
身に覚えは全くない。しかし忘れている可能性も否定出来ない。
自分自身の忘れっぽさが破滅的だと言う事だけは自覚している凛。
(嘘も方便…だよね、)
『……あ、そうでした…ね…!すっかり忘れてました…ごめんなさい…』
「いいよ、思い出してくれたなら。嬉しいよ。
輝元も凛ちゃん来てくれるの、嬉しいよね?」
「ΣΣブハッ!!
な、ななな、何ゆえ…そ、そのような…!」
「おや、顔が赤いようだけど…どうかしたかい?輝元」
「それは…!お、お茶が熱くて…っ」
『輝元さん、熱すぎましたか?すみません…。
これで拭いて下さい。顔がお茶で濡れてます』
「わ、私に構うな…!」
「凛ちゃん、輝元は凛ちゃんに拭いて欲しいみたいだよ」
『え?』
「…っ!?」
輝元をおちょくる元就は実に楽しそうです。
確かに楽しいだろうね、リアクションが出●哲朗並みに大袈裟だから。
「…ちょっと待て。
いつそんな約束をした」
凛と元就の会話に噛み付いたのは清正。
『ええっと……』
「ははは、たった今だよ」
『……(やっぱり…)』
おいおい。
凛の性格を見越した上の元就の心理戦だったようです。
「…悪いが、凛は俺と城下へ出向く。よって凛は安芸へは行かぬ」
「違うよ!俺と甘味屋巡りするんだから!」
「ちょっと待てぇぇい!!俺の鍛練に付き合って貰うんだよッ!!俺のカッコイイ所、凛ちゃんにも見せてぇんだ!!」
「何でお前らまで出てくる!凛は俺とのんびり過ごすと決まってんだよ!」
更に割って入ったのは三成と半兵衛と正則。3人共鼻息が荒いのは何なのか。
清正はすかさず反論。
そして男達の抗争は激化していく。
兼続や幸村達も巻き込んで。
「いや、明日こそ凛を謙信公と綾御前と景勝様に紹介するのだ!」
「いえいえ、凛殿は私と共に上田へ行くのです!私も父上や兄上や義姉上に凛殿を紹介したいのです!」
「紹介などする必要ないだろう!!嫁がせる気か!?」
「はい、そうですが何か?」
「……」
幸村、アンタ……。
「……ふむ、それも有りだな。
景勝様に嫁がせるという手もあったか…!」
「……」
何故、景勝が出てくる……。
「駄目だって!!凛は俺のお嫁さんになるんだからッ!!」
「フン、誰が好き好んで腹黒性悪怠慢軍師の元に嫁ぐと言うのですか。
俺の嫁になるのが一番に決まっている」
「話の主旨を曲げるな…!!
凛の恋人は俺だろ!!俺に嫁入りするに決まってんだよッ!!」
「その自信はどっから来んだ、このマザコン野郎!!テメェは母ちゃんだけに甘えてれば十分だろがッ!!」
『あの…っ』
「そうです!清正殿はおねね様が居るではありませんか…!」
「そ、それとこれとは違うだろ…ッ」
「どう違うのさ。清正は大好きなおねね様さえ居れば十分だもんねー?」
「おねね様なら貴様を受け止めてくれるだろう」
「だから話の主旨が…っ」
「「「シュシってなんですかーわっかりませーん」」」
「貴様ら…またしても…!」
ああ言えばこう言う、とは正にこれです。
しかしここには本気で分からない人が。
「……シュシって何だぁ…?
…あ!種の事か…ッ!?」
「…それは"種子"だ」
官兵衛さん、またしても的確なツッコミありがとうございます。
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