現代戦国漫遊録

懲りない奴ら
1ページ/7ページ


ある木曜の夜。

夕食も終わり、皆がリビングで団欒の一時を過ごしていた時の事。



「ねぇ、凛ちゃん。次は私達の所へ来てくれるんだよね?」

『………?』

不意な元就の問いに、凛はポカンと口をあけ硬直した。


(………覚えてない…約束したっけ…?)


「あれ?忘れちゃったの?
…それは残念だね、」

『………』

空笑いしながら目を伏せる元就は本当に残念そうで、その途端、凛の中に妙な罪悪感が芽生え出した。

身に覚えは全くない。しかし忘れている可能性も否定出来ない。
自分自身の忘れっぽさが破滅的だと言う事だけは自覚している凛。


(嘘も方便…だよね、)


『……あ、そうでした…ね…!すっかり忘れてました…ごめんなさい…』

「いいよ、思い出してくれたなら。嬉しいよ。

輝元も凛ちゃん来てくれるの、嬉しいよね?」

「ΣΣブハッ!!
な、ななな、何ゆえ…そ、そのような…!」

「おや、顔が赤いようだけど…どうかしたかい?輝元」

「それは…!お、お茶が熱くて…っ」

『輝元さん、熱すぎましたか?すみません…。
これで拭いて下さい。顔がお茶で濡れてます』

「わ、私に構うな…!」

「凛ちゃん、輝元は凛ちゃんに拭いて欲しいみたいだよ」

『え?』

「…っ!?」

輝元をおちょくる元就は実に楽しそうです。
確かに楽しいだろうね、リアクションが出●哲朗並みに大袈裟だから。




「…ちょっと待て。
いつそんな約束をした」

凛と元就の会話に噛み付いたのは清正。


『ええっと……』

「ははは、たった今だよ」

『……(やっぱり…)』

おいおい。
凛の性格を見越した上の元就の心理戦だったようです。



「…悪いが、凛は俺と城下へ出向く。よって凛は安芸へは行かぬ」

「違うよ!俺と甘味屋巡りするんだから!」

「ちょっと待てぇぇい!!俺の鍛練に付き合って貰うんだよッ!!俺のカッコイイ所、凛ちゃんにも見せてぇんだ!!」

「何でお前らまで出てくる!凛は俺とのんびり過ごすと決まってんだよ!」

更に割って入ったのは三成と半兵衛と正則。3人共鼻息が荒いのは何なのか。
清正はすかさず反論。



そして男達の抗争は激化していく。
兼続や幸村達も巻き込んで。


「いや、明日こそ凛を謙信公と綾御前と景勝様に紹介するのだ!」

「いえいえ、凛殿は私と共に上田へ行くのです!私も父上や兄上や義姉上に凛殿を紹介したいのです!」

「紹介などする必要ないだろう!!嫁がせる気か!?」

「はい、そうですが何か?」

「……」

幸村、アンタ……。


「……ふむ、それも有りだな。
景勝様に嫁がせるという手もあったか…!」

「……」

何故、景勝が出てくる……。



「駄目だって!!凛は俺のお嫁さんになるんだからッ!!」

「フン、誰が好き好んで腹黒性悪怠慢軍師の元に嫁ぐと言うのですか。
俺の嫁になるのが一番に決まっている」

「話の主旨を曲げるな…!!
凛の恋人は俺だろ!!俺に嫁入りするに決まってんだよッ!!」

「その自信はどっから来んだ、このマザコン野郎!!テメェは母ちゃんだけに甘えてれば十分だろがッ!!」

『あの…っ』

「そうです!清正殿はおねね様が居るではありませんか…!」

「そ、それとこれとは違うだろ…ッ」

「どう違うのさ。清正は大好きなおねね様さえ居れば十分だもんねー?」

「おねね様なら貴様を受け止めてくれるだろう」

「だから話の主旨が…っ」

「「「シュシってなんですかーわっかりませーん」」」

「貴様ら…またしても…!」

ああ言えばこう言う、とは正にこれです。

しかしここには本気で分からない人が。



「……シュシって何だぁ…?

…あ!種の事か…ッ!?」

「…それは"種子"だ」



官兵衛さん、またしても的確なツッコミありがとうございます。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ