-short story-☆
□『焔の誓い』 (小説)
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あなたと出会ってからもう十数年の月日が流れて…あなたはチャンピオンに就任し、またとても美しく成長なされた。
もちろん、僕もあなたと共に戦い、そして片時も離れたことはない…けどーーー…
「…ーーン」
「…?」
「起きて!バクフーン!」
「!!」
いけない…いつの間にか寝てしまっていたのか…
「じゃーん!ねぇ、どうかな?」
「…」
「似合う…かな?」
ああ…なんて美しいのだろう、純白のドレスに身を包まれて…こんな艶姿を皆に見せるなんて…もったいない…
…そう、この十数年の月日の中で…あなたにとって“特別な人”が出来た。
そして…今日あなたはこの純白のドレスを身に纏い、甚だしいこの式場でーーー結婚してしまう。
「もう、コトネったら!」
「お母さん!」
「バクフーン、困ってるじゃないの!」
「えー…でも…ーーーバクフーンは私にとって大切な一番のパートナーだもん!だからちゃんとこの晴れ姿、見てもらいたくって!」
「うーん…まぁ、それもそうね!アハハ!」
「でしょー?」
「…ーーーーー」
…何でだろう?「ズキッ」って音がした気がする…
…やっぱり僕はあなたにとって『ポケモン』で……
「大切な一番のパートナー」…ポケモンにとってパートナーにとても大切と…そしてその中でも「一番」と言ってもらえる事は、この上無き幸せ…
僕はそんな最高の言葉のパートナーであるあなたから頂いてとても幸せなハズなのに…こんな嬉しいハズの言葉も…すごく…痛いーーー
「んで、どうかな…バクフーン?」
「!!」
「…バグバグッ!」
「ありがとー!バクフーン♪」
「……」
僕は…どうして『人間』として生まれず…『ポケモン』として生まれて来てしまったのだろう?…と何度も思った。
そして、もし僕が『人間』だったらって幾度も思った。
いつも側にいるから…お互いの気持ちは通い合う事は出来る、しかし…あなたの『言葉』を僕は理解する事は出来るけど、僕の『言葉』では僕のこの胸の内を「愛しています」…とあなたに伝える事が出来ない事がとても悔しくて…辛い…ーーー
言葉が伝えられないのなら、行動で伝えれば良いと…そう思った事もある。
だけど、僕がぎゅっと抱きしめても、あなたはただ僕がじゃれていると思うだけだった…
僕が『人間』だったら…あなたは僕が抱きしめたら少しでもドキッとするのだろうか…?
僕を一人の男なのだと…見てくれるのかな…?
…だから、あの男が羨ましくて、憎い。
“シルバー”……
『人間』としてあなたに気持ちを伝えられた事が羨ましい、そして何よりあなたの心を奪った事が憎いんだ…
僕も…貪欲にも程がある…
もし、今僕がこんな事を考えているってあなたに知られたら…あなたはすごく悲しむだろうな…
そういう意味では『ポケモン』で良かったかもしれないけど…
………ーーーーー。
どうして…あなたはあの男を選んだんだろう?
確かにあの男はあなたに出会った事で、僕達が出会った頃に比べたら改心したと思う、けど…
あの男はーーー……
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