MagicArt

□第2話
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 そして連れて行かれたの先は学園の中央にそびえ立つ中央棟。別名、教員棟。その別名通り、学園の教師が居る校舎だ。職員室が大きくなったものと思ってくれればいい。
 この教員棟は何が目的なのか、何故か唯一の木造である。創立者の趣味なんだろうか? そして今まで一度も火事になった事がないのが不思議でならない。

「まず改めて名乗っとくが、オレは矢野浩司。2年B組だ」
「あたしは神崎詩織。矢野くんと同じクラスよ」

 教員棟に入ってすぐ、2人にそう自己紹介された。
 同じクラスなだけあってか、仲は良さそうだった。いや、仲が良いのは関係無いか。

「で、お前は?」
「え、俺?」
「当たり前だろ? オレ達は名乗ったんだからお前も名乗るのが礼儀ってもんだ」

 いや……お前ら勝手に名乗ったんじゃん。
 まぁ、別にいいけど。

「橘悠斗。2年D組」
「橘……って、中学ん時バスケで有名だった奴じゃねえか!」
「っ!?」

 矢野が予想外の事を言って、俺は思わず息を飲んだ。
 ……まさか、知ってる奴がいるなんてな。

「そうだったの?」
「いや、そんな大層なもんじゃない」
「そうだっけか? 凄いって聞いたけど」

 マズい……この話題が広がるのはかなりマズい……。

「んな話より、俺はこれから何されるんだ?」
「おっと、そうだった。もう少しで着くからな」

 話題は逸らせたけど、相変わらずどこに向かうかは教えてくれないらしい。
 まぁ、教員棟って言っても怪しい場所は無かった筈だから心配はしないけど。
 で、それから数分、着いたのは3階にある高等部職員室だった。まだ教師が居るのか、電気が点いている。
 神崎が扉をノックして中に入り、俺と矢野も後に続いた。

「んにゃ? おー、しおりんじゃん、遅かったわね。矢野っちも」

 中に入ると、広い部屋には1人の女性教師が居た。
 我らが2年D組のクラス担任――坂波涼香だった。この教師、若くて美人で、さらにフランクな感じだから生徒にかなり人気なんだけど、俺は苦手なんだよな……。

「おっと、たっくんまで居るじゃん」
「たっくん言うな!」

 そう、この人は、生徒に渾名を付けたがるんだ。しかもそのクセ付けたら間違わないし忘れないと言う、かなりの高スペックだし。

「どしたの?」
「坂波先生、彼にアレを渡す事は出来ますか?」
「アレを? 訳を聞かせてもらえるかしら?」

 神崎に受け答えする先生の表情が、今までに見た事のないような真剣な表情になった。

「昨夜の出来事を説明するなら、実際に体験した方が早いと思います」
「なるほどねぇ……たっくんも同意したのね?」
「はい」

 少しだけ悩んでから、先生は何かを机の中から取り出した。
 何かは分からなかったけど……小さい、ビー玉みたいな大きさだった。

「たっくん、こっち来て手のひら出して」

 言われた通りにしてみると、先生が手のひらに先ほどの珠を置いた。
 刹那、眩い光がその珠から放たれて、あまりの光の強さに俺は思わず目を閉じた。再び目を開くと、先ほど珠が置いてあった手のひらの上には、1つの指輪があった。

「おめでとう、これでたっくんも『特殊科』の一員よ」
「……………はい?」

 言われた言葉がイマイチ理解出来なかった。
 『特殊科』? この学園って普通科しかなかった筈じゃ? つかその一員って?

「特殊科って何? って顔してるわね」

 先生が悪戯っぽく微笑んでいたけど、今は正直どうでもよかった。

「特殊科ってのは……武器と魔術を使って戦う事を専修する科よ」
「いやいや……武器は昨日見たからそこは納得出来るけど……魔術って……」

 まさにオカルト。それこそファンタジーの世界の話だ。
 そんな事を真顔で言われても困る。

「魔術はちゃんとあるのよ。もちろん、それを使う為の魔力も人間にはある」

 そう言った神崎は、右と左の人差し指を向かい合わせた。その2本の指の間を、バチバチと電気が流れ出した。

「しおりんがやってるのも、歴とした魔術よ」
「いや、だからって俺には……」
「その種を発芽させれたんだから、たっくんにも魔力はあるわ」

 種と言うのは、さっきの珠の事だろうか? そして発芽は、きっと珠から指輪に変わった事だな、多分。

「じゃあ……武器と魔術は分かった。それで何で戦うんだよ? 普通は死ぬだろ?」
「それはいろいろと理由があるのよね〜」

 先生は頬を掻きながら苦笑い。説明しづらいのか?
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