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□たった一人の
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一年に一度の大切な日

たとえそれがお菓子会社の陰謀だとしてもやっぱり好きな人からはチョコを貰いたいと思うのは道理というもので、前日の夜にキッチンでチョコを作るマスターの様子を見に行った

ひょっこりとキッチンを覗けばエプロンを着けてチョコ作りに励むマスター

うん、可愛い...
そんなマスターの手元には小さくラッピングされたチョコが5つ、きっと皆の分

そしてその横に丁寧にラッピングされたピンクの箱

『...レン?どうしたの?』

俺の存在に気づいたマスターサッとピンクの箱を隠したのが見えた

「あ...ううん何でもない、ちょっと喉が渇いて」

『そっか』

マスター、その箱に入ってるのは本命なの?誰にあげるの?
聞きたいことは沢山あったけど、結局聞けずにキッチンを後にした

部屋に戻った後もあの箱が気になってなかなか寝付けなかった


次の日、マスターから小さくラッピングされたチョコを手渡された

『じゃあ、これがミクで、こっちがリン、これはレンね』

「わーい!マスターありがとう!」

「やったー!リンマスター大好き!」

「...ありがとう」

『あれ?メイコとカイトは?』

「二人なら朝からお出かけだよ!」

『そうなんだ...』

シュンと元気を無くしたマスター
もしかしてマスターはあの本命、カイト兄にあげるつもりだったの?

ミク姉とリンが部屋に戻った後、今だにキッチンの隅にちょこんと置かれた箱に視線を移した

「マスター...あれさ」

『ん?』

「カイト兄にあげるつもりなんでしょ?」

『え?』

「だっ、大丈夫だよ!マスターの作ったやつだからきっとカイト兄も喜んでくれるよ」

あぁもう、何言ってんだ俺...
何でこんな時にマスター応援してんだよ
本当はカイト兄とマスターがくっつくの嫌な癖に

するとしばらくポカンとしていたマスターは急に吹き出して笑い出した

「マスター?」

『ふふっ、あれはね、レンにあげるやつだよ』

「は?」

イマイチ状況が飲み込めず混乱する

「だって俺貰ったよ?」

『ミクとかリンの前で堂々と渡したりしたら冷やかされちゃうでしょ?』

「カイト兄がメイコ姉と出かけたって聞いた時落ち込んでたじゃん!」

『あぁ、あれはついでに夕飯のお買い物頼めばよかったなって思って』

クスクス笑うマスターを見て俺の顔が赤くなるのを感じた
はやとちりして、勘違いして、俺馬鹿みたい...

『それとも、私の本命はいらない?』

「!!、い、いる!」

真っ赤になった顔を隠す様に俺はマスターに勢い良く抱き着いた



たった一人の

大切な人

(私の本命は始めからレンだけだよ)
(うん、すっごい嬉しい...マスター大好き)
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