novel

□気になる君へ
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私は教室の窓辺を見つめた。
一番端の、窓側の席。
午前中だから、あまり日の光が入ってこず、変わりに爽やかな風が吹き抜けている。

今日も、その席で彼は外を眺めていた。


彼のことは、よく知らない。

知っていることと言えば、名前とやっている部活と委員会活動くらい。
それくらい、距離のある人だった。

無口で、あまり人がよってこない。


・・・というよりも、自ら他人と距離を置いているようにしか私には見えなかったのだが。



どうしてこんなに彼のことが気になっているのかって?
好きなのって?

・・・好きとは、違う気がする。

どちらかと言うと、同情に近いかも知れない。
あ、でもそんな事言うと、彼には怒られちゃうかも。
彼は同情なんていらないってきっと怒るから。

・・・だって、彼と私はよく似ているから・・・。


私も、同情されるくらいなら放っておいて欲しい。
出来るだけ、気遣わないで欲しい。

私の憶測だけれども、きっと彼は私と同じで・・・。



“ココロニキズヲオッテイル…”



違うかも知れない。

けど、私にはそうとしか見て取れなかったから。

いつも独りの彼。
窓の外を見つめる彼。

どんなに観察しても、そうとしか感じられなかった。

私と、同じ。
心に、深い深い闇を抱え込んでいる・・・。



だけど、一つだけ。
一つだけ違うところを見つけた。

彼と、私の似ているけど、たった一つの決定的な違い。


それは・・・









『ねぇ、キミに、ヒカリは見える?』









そう。
この問いが答え。

私には、一筋の、か弱いけれど、確かな光がある。

決して疑うことも、裏切られることもない、揺るぎない存在が。

傷ついた心をも癒す、その光を。


孤独に、独りで傷ついた私の光。
今も孤独の闇に独りで捕われ続け傷ついている君。

それに気づいた。
だから、私はこう思ったんだ。











『私は、キミのヒカリにはなれないかな?』











君がどう答えるかは、分らない。
拒まれることだってあると思う。
だけど・・・

だけど、決してこの手を戻すことはない。

君の光になると決めたから。


ねぇ、だから。



少しで良いの。





君と、一度で良いから・・・









「分かり合えない、かな?」










君の光のある未来は、目の前だから。










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