Silent Sweetheart 【01〜40】

□Silent Sweetheart 【04】
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「あれ、どうしたい、お前ら。
珍しいメンバーだね」

 入って来たのは石神、丹波、
清川に黒田と杉江、そして椿と
赤崎に、何故か村越と緑川まで
いる。
 普段ならあまり一緒に食事な
どしなさそうな面子だ。三、四
人で食事というならてもかく、
九人は確実にない。
 だいたいこれでは、達海と後
藤含めるとひとチーム分の人数
ではないか。
 しかも、学生でもあるまいし、
飲み屋ではなくお好み焼き屋に
集まるというのはどうなのだ。

「なんかお前ら、部活帰りの高
校生みたいだなー」

 と笑うと、緑川がいつもの冷
静さで答えた。

「それぞれ別で出て来たんです
が、なんでかそこで会いまして。
みんな飯食うって言うんで手近
な店に入ったんです」
「あ、そーなの」
 さらっと受け流しながらお好
み焼きを口に運ぶ達海の側に九
名が陣取り、なにやらすっかり
ETU御一行様という様相にな
る中、達海が気になったのは村
越ではなく、赤崎の様子である。

 ――なんだ、赤崎の奴。俺か
ら目ぇ逸らしてんな。そういえ
ば練習中も微妙な感じだったよ
うな?

 しかも、いつも無駄に自信満
々で口の減らない、勝ち気な赤
崎にしては珍しく、困惑と動揺
が顔に出ている。憔悴している
と言ってもいいくらいだ。
 なんだ? と首を傾げながら
それとなく他の連中にも視線を
向けると、達海と後藤のいる席
の後ろに石神、丹波、緑川と村
越が、その他はもうひとつ向こ
うのテーブルに着いた。

「練習終わってもこのメンバー
で飯って、ほんと、学生かよ、
俺らはよ! なぁ、椿!」
「えっ! いえ、学生じゃない
っスけど……」
「けっ、お前なんぞ学生に毛が
生えた程度じゃねーか!」
「す、すみません!」
「黒田、椿で遊ぶのもほどほど
にしとけよ」

 黒田と杉江はいつもどおり、
椿はまぁ、私生活でもビビりら
しい。
 やればできる子な気がするの
に、どうもいまひとつな感が拭
えない奴だ。

「清川ー、オススメとかないの
か? お前たまにここ来るんだ
ろ?」
「あ、すんません、俺、エビ玉
しか頼んだことないス」
「うわ、役に立たねー奴だな!」

 背中合わせの丹波と清川はメ
ニューを見ながらやいやい言っ
ていて若干うるさい。

「さて、俺はどうすっかな。蕎
麦はないもんな。ま、とりあえ
ずビールで」
「麺食いたいのか? だったら
なんで一緒に入ってきたんだ、
石神」
「やー、なんか面白そうだった
んで、つい」

 石神は若干不思議な奴だが、
緑川はさすがに落ち着いていて
誰とでも話せるので会話に不自
然さはない。
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