Short Story 2

□赤崎くんと達海さん
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「デート?」
「デート」

 認めた。
 かわいい。
 達海さんはこういうのに弱い
のか、と思う。
 俺が若いことを、この人は怖
がってるけど、俺もこの人が年
上なのを怖がってる。
 でも、その恐怖を凌駕して余
りある愛しさが、俺と達海さん
を突き動かしている……そう信
じてる。
 そんな甘い想いを抱きながら、
ブラブラしていると。

「……赤崎?」
「と、達海さん?」
「げっ、」

 俺が思わず短い声を上げたの
は、前から歩いてきたのがET
Uの先輩、杉江&黒田の両CB
である。
 この二人だけなら、実はまだ
そうは面倒くさくなかった。
 なにしろこの二人はデキてい
る。そう、俺と達海さんと同じ
く……いや、それよりずっと前
から、杉江さんの腕の中で黒田
さんは、普段あんなにうるさく
てけたたましいのに、かわいく
……もちろん杉江さんにしかそ
うは思えないだろうが……鳴い
ていたのだから。
 けれど、この二人の他にいた
人物が、俺の顔に「面倒くさい
マジ面倒くさい!」という表情
を浮かばせた。

「へ〜〜〜〜っ、ふ〜〜〜〜ん、
そうなんだぁ!」
「なんっスか、丹波さんっ!!」
「え〜〜〜????」

 ニヤニヤと笑う丹波さんの、
その妙な笑みが俺と達海さんの
繋いだ手に注がれているのを感
じた。
 でも、絶対に離すもんか。
 いつも格好つけて、俺は格好
良いです、と周りに宣伝してい
る俺だけど、でもそれが絶対的
に成功しているわけではないこ
とくらい知ってるし、なにより
この先輩は俺のそういうところ
を弄るのが好きなのだ。

「だぁぁって、お前ぇ〜〜。達
海さんとそういうことになって
るとか、どんだけだよ?」
「どんだけって、なにが?」

 達海さんがシレっとして尋ね
るけど、でも繋いだ手は離そう
とはしてない。
 そのことが丹波さんのめちゃ
くちゃ嫌な笑いを張り付かせた
顔を見ても暴れ出しそうな自分
を抑えられている要因だろう。

「いや、でも、正直驚いたな。
赤崎、いつの間に達海さんに告
白してたんだ?」
「つーか、達海さん……赤崎な
んて生意気野郎とよく一緒に居
られるな、あんたっ!」

 杉江さんはいつもどおりだけ
ど、黒田さんは相変わらず失礼
だ。
 確かに俺は我が強くて生意気
だけど……それは自分が一番よ
くわかってる……それをこのう
るさいだけの先輩に指摘される
となんだか無駄にイラっとする
ので、俺は黒田さんと相性が悪
い。

「うるせぇっスよ! 関係ない
でしょうが、あんたにはっ!」
「なんだとコノヤロー!」

 バチバチと睨み合っていると、
達海さんが笑って俺の肩に頭を
預けてくる。
 往来だが、まだクラブハウス
の近くな為、そう人通りは多く
ないのが幸いした。
 しかも、体格のいい杉江さん
がいるので、視線はそちらに行
きがちだ。

「……赤崎、俺を目隠しに使う
なよ」

 人の視線から達海さんを隠そ
うとしていると、杉江さんに苦
笑混じりに言われた。




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