Silent Sweetheart 【派生】

□妄想プラトニック
1ページ/7ページ

 ジーノが達海をエスコートし
て食事に連れ出してしまった後。
ETUの寮にいる選手たちは、

「はーやれやれ、達海さんが無
事に帰ってくる方に賭ける人ー」

 という丹波の声に、アホです
か、などと突っ込みを入れつつ、
それぞれ散っていった。
 その中には、丹波に一番突っ
込みを入れている赤崎も含まれ
ていて、椿もそれにならって自
分の部屋に戻ったのだが。

「……あ、ジャージ」

 達海が脱いでいった……とい
うよりは、赤崎に脱がされてし
まったジャージ。
 脱ぎっぱなしのそれを、やれ
やれと丹波のようにため息をつ
いて、きれいに畳んでいく。

「それにしても……達海さんの
体、キレイだったなぁ……」

 赤崎に脱がされて椿の服を着
させられていく一部始終を、椿
は見ていた。
 余すことなく、下着姿の達海
までしっかりと見ていたのだ。
 以前、村越と抱き合う達海を
目にしている椿だ、実は隠され
ているところもバッチリ見てし
まっているのだが、見ようと思
って見た達海の体は、やはりと
ても美しかった。
 艶かしい、と思うほどに。

「いいなぁ、後藤さんも、村越
さんも……」

 十年後には、自分も達海の視
界に入れるよう、努力しようと
思っている椿だが、とは言え、
一朝一夕で変われるものでもな
い。
 いまの達海に触れられるのは、
後藤と村越だけなのだ。
 以前、キャンプ最終日に暴挙
に出た自分自身の感覚や、何度
もキスをした札幌での出来事が
思い起こされる。
 いや、キスをしたというのも
無理やりだったのだが……だが、
達海の唇の感触や抱き締めたと
きの体の細さを、椿は忘れたこ
となどない。

「俺も……いつか」

 達海に認めてもらえる男にな
ろう、と思う。
 だが同時に、今の欲望を我慢
できるほど、椿はできた男では
ない。
 無欲でもなく、自分の心を誤
魔化す術も持ち合わせてはいな
い。
 なによりも、達海の体を見て
なおなにもせずにいられるほど、
椿は幼くもないのだ。

「……ダメだ、」

 いつも達海が着ている、ダル
ンダルンなシャツ。
 そのシャツをどうしようとい
うのか、自分でもわからないま
まに指先で弄ぶ。
 すると、ふわ、と。

「あ、」

 達海の匂いがした。
 いつもアイスばかり食べてい
る達海の、清涼感があるのにか
すかに甘い、そんな香り。
 コロンでもつけているのかと
思うが、聞くこともできない、
椿にとってはなによりも官能的
な香りが鼻腔をくすぐって、下
半身が震えた。
 我知らず、右手が下肢に伸び
る。
 部屋着にしているジャージの
上から股間に触れると、信じら
れないことに、既に固く張り詰
めていた。

「ダメだ……、」

 口ではそう言っても、手は止
まらない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ