Silent Sweetheart 【派生】

□Silent Sweetheart 【13.4】
1ページ/4ページ

「なー、石浜ー、どうすんよ、
この屍」
「ほっとけって村越さんに言わ
れたんだろ? そうじゃなくて
も、ほっとくしかなさそうじゃ
ん、これ」

 ぶっちゃけ面倒臭いし、死な
せといた方がよさそう。
 ということで清川と石浜の意
見が合致する。

「薄情スね、ふたりとも」
「お前は黙ってろ、赤崎」
「薄情スよ〜……かわいい後輩
が死にそうなのにー……」
「うっせ、ぐでんぐでんになら
ねーとかわいくなんない後輩に
優しくする義理がどこにあんだ」

 ううう、杉江さん、清川さん
が冷たいス……と、普段の生意
気さからは想像もつかない弱気
な赤崎の背中をさすりながら、
杉江は隣の清川の部屋で潰れた
ままの黒田は大丈夫かなぁ、と
思った。
 寮の部屋で呑み、それ自体は
よくあることだ。
 ただ、いつもなら杉江、黒田、
丹波、堀田辺りで呑むことが多
いのだが、今日は何故か清川と
石浜、赤崎と呑んでいた。
 丹波と堀田は自炊を面倒臭が
っていまだに寮生活を続けてい
る。堺と石神はとっくに寮を出
ているが、以前はよく彼らも交
えて酒盛りしたものだ。
 ただ、何と言うか、最近の若
い連中は酒を呑まないのが増え
て、清川や石浜あたりはそこそ
こだが赤崎と椿はからきしだ。
若手で酒豪なのは意外にも世良
で、あれは完全にザルである。
 堺が以前、二度と世良とは呑
まねぇ、と地獄の鬼もかくやと
言う形相で呟いていた。
 たがら今日の呑みメンバーは
かなり珍しい。

「それにしても、監督が、村越
さんが、しか言わなかったな、
こいつ」

 弱いくせに酒瓶を引ったくっ
てらっぱ呑みしたあげくにわけ
のわからないことを繰り返し叫
んで沈没した椿は何かに激しく
うなされ、見るに堪えない。
 心配半分、野次馬根性半分で
様子を見に来た一同は夜中にな
にをしに外に行って、なにをし
て帰ってきたのか酔っ払い椿か
らなんとか聞き出そうと苦心し
たが……主に清川が、だ……結
局はうるさいし要領を得ないし
で匙を投げた。
 しかし、杉江にはぼんやりと、
椿が荒れている理由が想像でき
ている。
 達海さんの体って、見るだけ
でも刺激強そうだもんな、と思
いながら、村越はどんな風に達
海を抱くのだろうかと想像して
みる。村越の下で、達海はどん
な風によがるのだろう?
 だが、想像しようとすればす
るほど達海の体をイメージでき
ない。
 頭に浮かぶのは黒田の四肢ば
かりで、達海の顔を描いてみな
がらも妄想の中で呼ばれる名前
は「す、ぎぃ……!」という黒
田の甘ったるいものだった。
 自分で開発しておいてなんだ
が、普段はあんなに、はっきり
言えばうるさいほど俺様なのに、
一旦裸にしてしまうと黒田の体
はやらしくて、杉江は見事にの
めり込んだ。
 黒田への愛はある。むしろ溢
れているくらいだ。
 だが、村越に、そしておそら
く後藤にも抱かれている達海に
興味があった。あの達海さんが、
男相手にどんな顔をするのか。
 純然たる好奇心だ。

「……俺もかなり酔ってるかな」
「え、杉江さん、どうしたんス
か、急に。てか、あー、赤崎い
つの間にか沈没してっし!」
「しかも杉江さんのひざ枕って、
ガキかよ……」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ